テレビCMで楽曲使用 広島のバンドメンバー来イ 放送開始後に起用知り 「いたずらかと思った」
スポーツドリンクのインドネシア国内テレビコマーシャル(CM)にオリジナル曲が使われた、広島市のインディーズバンド、deneb(デネブ)のメンバー2人が初来イし、11日に南ジャカルタ区内でじゃかるた新聞の取材に応じた。メンバーが曲使用を初めて知ったのはコマーシャル放映開始後の3月下旬になってからで、ボーカルのばぶるすさん(44)は「エイプリルフールのいたずらかと思った」と当時の驚きを語った。
デネブは2010年結成の6人組バンドで、広島市佐伯区を拠点に全国で活動している。メンバーは20〜40代で、「おじさんとおばさんバンド」を自称する。
CMに使用されたオリジナル曲「グローリー」は12年、現メンバーになって初めて制作した曲で、初アルバム「イキルニスト」に収録された。「中学生同士がけんかした後の疎外感や失恋などを前向きに捉えた卒業ソング」で、今回来イしたリーダーでボーカル兼ギターの橘新二さん(33)が作曲、ばぶるすさんが作詞をそれぞれ担当した。
他の曲が銀行などのCMに使われた実績があったため、「グローリー」もテレビCMの長さに合うよう、さび部分を30秒にまとめる工夫をした。メンバーの間では「CMに使われたらいいね」と話していたという。
歌詞は日本語だが、スポーツドリンクの製造元、大塚製薬の現地法人アメルタ・インダ大塚(AIO)の担当者は「覚えやすさとメロディーの高揚感、元気でポジティブな歌詞がCMのコンセプトに合致した。最終候補の5曲から全会一致で(グローリーに)決まった」と起用理由を説明した。
インドネシア国内でコマーシャルが流れたのは3月18日〜5月10日。デネブのメンバーらが曲使用に気付いたのは、放映開始後の3月29日。メンバー全員がインフルエンザに感染し、仕事を休んでいる時だった。
橘さんが、動画共有サイトに投稿したグローリーの動画をたまたま開くと、見慣れない英語でコメントが寄せられているのを発見。それまで100回ぐらいだった再生回数も6千回に達していたため、「スパム(迷惑行為)かな」と不審に思い調べたところ、スポーツドリンクのCMに使われたことが分かったという。
これを知ったばぶるすさんが「自分たちの楽曲が流れている国を見てみたい」とインドネシア行きを即断、初めてパスポートを取得し航空券も購入した。
2人は8日にバリ島に到着し、ミュージックビデオを撮影。10日は南ジャカルタ区内のAIO社屋を訪れ、社員のリクエストで曲を披露、温かい歓迎を受けた。11日には同区のシブヤ・カフェでライブを行い、歌手の加藤ひろあきさんとも交流した。
仕事と掛け持ちでのバンド活動のため、これまでは海外へ行く機会を作れなかった。今後は知名度を上げつつ、海外での活動拡大の道を模索する考えで、ばぶるすさんは「いろいろな縁が広がり、インドネシアに来ることができた。中高年期待の星になり、諦めないでと伝えたい」と語った。(中島昭浩、写真も)