【スナンスナン】田舎道をサイドカーですいすい 障害者支援施設のツアー
サイドカーに乗ってバリの田舎道を走った。目の前に青々とした田んぼが広がり、川で遊んでいた子どもたちが手を振った。車窓から見るのとは違い、周りの景色がこちらに迫ってくる。バリ島ギアニャール県の障害者自立支援施設「バクティ・スナンハティ財団」が行っているハッピーハート(スナンハティ)ツアーに参加した。
午前9時、サイドカーに乗ったマデさんが迎えに来た。マデさんは5歳の時にポリオを患い、足が不自由になった。サイドカーは手でギアを操作できるよう改造してあり、運転は問題ない。用意されたヘルメットをかぶり、シートベルトをして、ウブドの中心を通ってまずテガラランの棚田へ向かった。乗り心地は意外と良く、運転は丁寧だ。何よりも周りを直接ぐるりと見渡せるのが気持ちいい。見慣れたウブドの街並みが目線が低くなっただけでいつもと違って見えた。
棚田を見学後、大統領宮殿のあるタンパクシリンに向けて出発。この辺りから風が冷たく感じたので、ジャケットを羽織る。しばらくするとサイドカーは主要道路から外れて細い道に入った。舗装はされているが、すれ違うバイクもない静かな田舎道だ。すると右手の奥に工場のような大きな建物が見えてきた。見上げるようなガルーダ像で有名な木彫家のマデ・アダ氏の仕事場だ。道は青々とした田んぼを通り抜け、タンパクシリンの観光名所「聖なる湧き水」のティルタ・ウンプル寺院のすぐそばに出た。沐浴(もくよく)する人たちでにぎわっていた。
寺院でしばらく過ごしたあとは、さらに北上して道路沿いにある観光農園に立ち寄った。ここを最後に来た道とは異なる裏道を下ってスナンハティ財団の施設へ。途中には昔ながらの村があったり、のどかな田園風景があったり、森の中に入ったようになったりと風景がくるくる変化して楽しい。午後1時前、施設に到着。施設利用者らで作ったビュッフェスタイルのインドネシア料理を食べてツアーが終わった。
「ツアーは訪問客の提案で始まりました。まだ1カ月に数回しか出ていませんが、これが毎日ならとても助かります」と担当者で四肢が不自由なアユさんは話す。サイドカーは10台、運転手は全員障害者だ。行き先は客が指定するか、彼らにまかせてもいい。いずれにせよ好きな場所で止まって、買い物をしたり、写真を撮ったりできる。
今回一緒に参加したドイツ人女性のジョセフィーヌさんは「普通のツアーと違ってバリのいろいろな姿を見ることができた。説明もちゃんとしてくれて、とても良かった。食事もおいしい」と、とても満足していた。ツアー料金は昼食込みで25万ルピア。ウブド周辺は無料で送迎する。(北井香織、写真も)
バクティ・スナンハティ財団
2003年、車椅子生活を送るプトゥ・スリアティさんが設立し、障害者自身が運営する非営利組織。車椅子の提供や技能訓練などを通して、障害者が自信を持ち、自立することを目的としている。2年前には日本政府の支援で新たに教室の棟が建った。
Yayasan Bhakti Senang Hati
住所 Jl. Mundeh, Banjar Teruna, Desa Siangan, Gianyar
☎ 0361・954877/08123・662・951(アユさん)
ウェブ www.bhaktisenanghatifoundation.com/