【スナンスナン】海と森のリゾート バリ 西部国立公園を楽しむ
穏やかなマングローブの海を泳いだ。インドネシアの木造船ピニシに乗って海に沈む夕日を眺めた。森の中でシカの親子に出会った。多様な自然を体験できる広大なバリ島西部国立公園。その北西端、ダイビングスポットしても知られるムンジャンガン島対岸にエコ・ツーリズムを掲げたリゾート「プラタラン・ムンジャンガン」がオープンした。
国立公園の広さは約190平方キロ。プラタランは、海に面した開発が許可された一角にある。入り江の向こうには別の高級ホテルが建設中で、この地域がバリの新しい観光名所として注目されているのがうかがえる。難点は空港から約4時間かかること。とはいえバリ北部の山を越えて行く道中には湖や滝があり、景色を楽しみながらのんびり行くのもいい。
部屋はジョグロハウスと呼ばれる古民家風で、周りの風景と調和している。正面はマングローブが枝を広げた海。漬かるだけの小さなプライベートプールもあるが、海に入るほうがずっと気持ちがいい。沖にはシカを意味する無人のムンジャンガン島が浮かんでいる。この辺りの森は乾期になると葉が枯れ落ちるため、シカたちは緑の残る約2キロ離れたこの島まで泳いで行き、新芽が吹き出すころ戻ってくるという。
昼過ぎからはプラタラン所有のピニシに乗ってシュノーケリングとサンセットクルーズに出かけた。ピニシはスラウェシ島で今でも造られている伝統的な帆船。帆を広げた姿は優美そのものだが、普段はエンジンを使っているので、風の音しか聞こえない船旅というわけには行かない。それでも木のデッキに座って水平線を見ていると、何だかとてもぜいたくな気分になる。停泊したムンジャンガン島沖は海岸から数メートル先がいきなり深くなっていて、そこに大小さまざまな魚が泳いでいた。
西部国立公園はバリ固有の鳥、カンムリシロムクの生息地でもある。開発や密猟で一時は絶滅寸前に追い込まれたが、現在は保護活動のおかげで数が増えつつある。残念ながら今回目撃することはなかったが、その代わりに、ちょっと怖い顔をしたオオハシの仲間のつがいがレストランまで餌をねだって飛んできた。「どこからか逃げたのかもしれないが、すぐに周辺に連絡して捕獲しないよう伝えた。森の新しい仲間だから」とリゾートスタッフが話した。(北井香織、写真も)
◇PLATARAN MENJANGAN RESORT & SPA
住所 West Bali National Park Jl. Raya Seririt – Gilimanuk Gerokgak, Singaraja, Bali
☎ 0361.411388
ウェブ www.plataran.com/menjangan/