【スナンスナン】華麗な歴史の世界へ メンテン トゥグ・クンストクリング・パレス

 緑の木々に囲まれたコロニアル調の大きな白い建物。中に一歩踏み込むと、広がるのはきらびやかな別世界。中央ジャカルタ・メンテンにあるレストラン「トゥグ・クンストクリング・パレス」を訪れると、華麗で歴史的、そしてロマンチックな時間が待っている。

 レストランとなっている建物は、オランダ統治時代の1914年にファイン・アーツ・サークルがオープンした。バタビア(ジャカルタの旧称)の芸術センターとして建てられ、34〜39年にはゴッホやピカソ、ゴーギャン、シャガールの展示会が開かれた。
 その後、日本軍統治時代の42〜45年にはインドネシアのムスリム団体「インドネシア・イスラーム最高議会(MIAI)」が使用し、独立後の50〜70年には移民局に。現在はインドネシア各地でホテルなどを経営するトゥグ・ホテル&レストラングループが所有し、2013年にオープン。建物は当時と全く変わらないまま残されている。
 1階のメーンホール「ザ・パンゲラン・ディポヌゴロ・ルーム」では、19世紀のジャワ戦争の指導者ディポヌゴロが描かれた縦4メートル、横9メートルの絵がひときわ目を引く。世界中から集められた家具やシャンデリアなどが、一昔前の豪華な雰囲気を醸し出す。メーンホールから続くバーは、香港を舞台にした映画「スージーウォンの世界」がモチーフで、また一味違った雰囲気だ。
 五つのプライベートルームの中で最大20人が使用できる「スカルノ・ルーム」は、スカルノ初代大統領の写真や私物が飾られている特別な部屋。真っ直ぐに並んだテーブルで食事を取れば、お城の1室にいるかのようだ。
 メニューも豊富で、インドネシアと東南アジア、ウェスタンの3種ある。またワインだけで約150種類、さらにウイスキーやコニャック、ジン、ラムなどその他のアルコールも100種類近くそろう。
 同レストランのお勧めはインドネシア料理のルンダン(税抜9万8千ルピア)。西スマトラのスタイルを参考に8時間以上煮込んであり、ナイフがなくてもフォークでほぐれる軟らかさだ。ベビーポテトやレッド・ビーンズも入っており、甘辛くてコクがある。ほどよい香りと塩気のココナツミルクで炊いたナシ・ウドゥック(同1万8千ルピア)がぴったり合う。ほかに白米とヘルシーなナシ・メラ(赤米)があり、三つから選ぶことができる。
 案内役のビアンカ・ンガディミンさんは「ジャカルタに残る貴重な遺産として保存も目的としています。私のおすすめはとってもロマンチックな夜の姿。一昔前の豪華絢爛(けんらん)なひと時を過ごすことができますよ」と話した。
 恋人や家族で訪れるのはもちろん、出張でジャカルタに来た人をもてなす場所としてもぴったりだ。(毛利春香、写真も)

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