広がる岩と崖 来るたびに変わる景色 東ジャワ州マドゥラ島アロスバヤ

 そびえ立つ崖、灰色の無機質な岩、草木の緑とまぶしい青空のコントラスト……。「ここはインドネシアなのだろうか」と思わずにはいられない。東ジャワ州スラバヤ市内からスラマドゥ橋を渡って約2時間弱の場所に位置する、マドゥラ島アロスバヤ地区バンカランには「ブキット・カプル・アロスバヤ」と呼ばれる石灰岩の露天掘り採石場がある。ここに広がる岩や崖は、すべて人が作り出した絶景だ。
 岩の表面には規則的な直線がしま模様のようにいくつも走り、あちこちに切り出された石が積み上がっている。歩き回っていると時折、「カンカンカン――」と高い音が聞こえる。真っ黒に日焼けした男たちが、石を切り出す音だ。ここで切り出されたブロックは、マドゥラ島で家を建てる際などに使用する伝統的な建材の一つで、切り出し方も昔から変わらない。女たちは小石や砂が混ざった土を集めて運び、目の細かい網の上に流し落として砂と砂利を分ける。砂はセメントと混ぜて使用するそうだ。
 ここで働くマンスルさん(52)は子どもの頃から父親を手伝いながら育った。朝から働き、正午から午後1時ごろに休憩がてら徒歩で家に帰り、また戻ってきて午後4時まで働く。切り出せるブロックは1日30個から40個ほど。大きさは縦横各約10センチ、奥行き40センチのものと、縦30センチ、横20センチ、奥行き40センチの2タイプが大半。小さい方はマドゥラ島では一つ2千ルピアで売れ、スラバヤでは輸送コストがかかるため同4千ルピアで売れるという。
 マンスルさんは「観光地として有名になれば、駐車料金などで収入も増える。ここは人が石を切り出して作られた場所。景色は来るたびに変わるよ」と話した。
■橋を渡って
  スラバヤ市内から海を横目にインドネシア最大、全長5438メートルのスラマドゥ橋を渡る。渋滞がなければあっという間にマドゥラ島に到着する。緑の田園や牛、のどかな村で暮らす人たちの風景が広がる。
 海側の大通りから少し内陸側に入ると「アロスバヤ」と書かれた表示があり、それを頼りに入り組んだ道を進むとブドゥラン村にある「アイル・マタ」と書かれた門と階段が見えてくる。周囲には観光バスが停まり、ムスリムたちでいっぱい。ここは小さな丘の上にある墓地で、ムスリムにとって巡礼地の一つ。同地には緻密に彫刻された墓石など16〜19世紀のマドゥラ島の王族の墓があり、マドゥラ島の歴史がつまった場所だ。
 「アイル・マタ」を正面に右手にひっそりとした道が続く。住宅に囲まれた車1台がやっと通れるほどの細い山道を車でのぼっていくと突然、赤茶色の崖が目の前に現れる。車を止め奥へ進むが、道は前後左右、さまざまな場所へ続いている。
 同地はインドネシアでもまだあまり知られていない観光スポットで、若いカップルや友人同士のグループなどが写真撮影を楽しんでいるが、人の入りはまばら。自由に好きなだけ探検できる。
■アドベンチャー気分
 向こう側をのぞくことができるぽっかり空いた穴や、人ひとりが上り下りできるほどの細い階段。岩場を伝って進んだ先にある大きな洞窟や深い穴。崖に囲まれた一本道……。天井に何百匹ものコウモリが居着く穴もあるが、独特の臭い匂いに注意。歩いているうちに、はるか昔からある遺跡に迷い込み、探検しているような気分になる。
 日差しが強く暑いので、水分補給を忘れずに。出入り口ではココナツジュースや水などの飲料が販売されている。入口手前まで車で移動でき、駐車料金は3万ルピア。同料金のみで入れたが、きちんと観光地化されていないため、入場料は変更の可能性がある。
 美しい海で過ごす1日も素敵だが、時には岩に囲まれたロストワールドに迷い込んでみては。(毛利春香、写真も)

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