ジャカルタっ子、大集合 湖畔のブタウィ文化村 「シトゥ・ババカン」
ジャカルタ土着の民族として知られるブタウィ人。20日に決選投票が行われたジャカルタ特別州知事選挙では「ブタウィ人が知事になるべきだ」と、現職知事がジャワ人の対抗馬を攻撃して議論が巻き起こった。交易都市バタビア(ジャカルタの旧称)時代から、多様な出自の人々との交流を経て生まれた独自の文化を楽しめるブタウィ文化村「シトゥ・ババカン」を訪れた。
南ジャカルタ・ラグナン動物園から南へ約5キロ。西ジャワ州デポックに入る手前のスレンセン・サワにババカン湖が広がる。ボゴールからチリウン川の河水が流れ込む。湖畔の高木の下には屋台がずらり。日曜のひとときを過ごす家族連れや若者たちでにぎわっていた。
屋外ステージや伝統家屋が並ぶ文化村では、毎週日曜午後1時から、ブタウィの大衆演劇「レノン」や伝統音楽「ガンバン・クロモン」「マラウィス」、伝統舞踊「トペン・ブタウィ」などの公演がある。
この日は、北ジャカルタ・タンジュンプリオクを拠点に活動する劇団シナール・バルが出演。軽妙なコメディを繰り広げる。「レバラン(断食明けの大祭)もとっくに終わったというのに、どこへ行ってたの」と浮気をとがめる妻に夫はたじたじ。息子を連れ出して問い詰める様子に、大人も子どもも大爆笑だ。
「普段は結婚式や割礼などに呼ばれることが多いが、ここにも定期的に出演している」と団長のヤミンさん(65)。役者や楽士を入れて計30人の大所帯を率いる。
ジャカルタ特別州政府は2004年、伝統文化保護を目的にババカン湖に文化村を開設。ブタウィの芸人たちに活動場所を提供するとともに、市民が集う行楽地になるよう整備した。
文化村でブタウィ料理「ソト・ブタウィ」を売るハパス・イスワンディさん(45)は「ここの住民は私のように昔から暮らすブタウィ人が多いが、ジャワ各地から来た出稼ぎの人もたくさんいる」と話す。
文化村がにぎわうようになって、住民の意識も変わりつつある。モスク管理者のアブドゥル・ロヒムさん(65)は、地元の若者らを集めてブタウィの音楽グループ「チトラ・マンガ・ボロン」を結成した。自費で湖畔にステージを作り、音響機材を持ち込んで週末ライブを開催する。
「まだ始めたばかり。練習も兼ねて、ここを訪れる人々と一緒にブタウィの音楽を楽しめたら」(配島克彦、写真も)