下町に響くミシンの音 路地裏の仕立て屋
中央ジャカルタの下町、クボン・カチャンの路地裏には路上の仕立て屋がいる。ミシンと作業台が備え付けられた自家製の自転車を道端に止めれば、そこが彼らの店であり作業場となる。路地裏には足踏みミシンのコトコトという音が静かに響く。
すそ上げを頼もうと、買ったばかりのコットンの長ズボンを持っていった。
「今、前のお客さんのシャツを直してるから少し待ってね」とムリシンさん(二六)は控えめな笑顔で言う。ズボンのすそ上げなら一万ルピア。スカート、シャツの直し、ボタンの取り付けなど一通りの衣服の直しが可能で料金は五千―一万五千ルピア。
「注文があればタオルに名前を刺しゅうしたり、布からシャツやズボンの仕立てもできるよ」とムリシンさん。そちらは五万ルピアほどで可能だという。
ムリシンさんは普段、タナアバンで店を開き、毎週日曜日だけクボン・カチャンで店を開いているという。お客の数は一日五―十組。月の稼ぎは百万―二百万ルピアほどだという。
前の人の分が終わり、ズボンの直しに取り掛かる。余分な布を切り、端を折り曲げると、慣れたミシンさばきで次々と糸を通していき、あっという間にズボンは仕上がった。きれいな仕上がりだ。安くて早い路上の仕立て屋は、今後も何かと重宝しそうだ。