【スナンスナン】駐車場裏の本格コーヒー屋さん パプアからスマトラまで タナメラ・コーヒー
中央ジャカルタ・タムリンシティの近くに本格インドネシアンコーヒーの店があると聞いて2度出かけたが、どうしてもたどり着くことができない。そんな店はないとまで警備員に言われた。それなら、とグーグルマップを片手に歩いてみるとタムリンシティモールの裏のバイク置き場に出た。下に通じる階段を足早に降りるとかすかにコーヒーの匂い。導かれるように左へ曲がると「タナメラ・コーヒー」があった。
金網が入ったガラス張りの引き戸を開けると、一気にコーヒーの香りに包まれた。改めて立地を考えると、こんなおしゃれなコーヒー店がなぜここに、と疑問に思うほど。壁の棚に並べられた赤い袋。「FRESH ROAST ARTISANS」。その袋に印刷された「職人」の文字を見て、期待に胸が膨らむ。
タナメラ・コーヒーは2013年に創業したばかりだ。扱うのはインドネシア産のアラビカ種コーヒー豆のみ。パプア・ワメナ、バリ・キンタマーニ、バンドン・マラバル、トバ・マンデリン、アチェ・ガヨ、スマトラ・シディカラン――。店の奥に鎮座する12キロ焙煎(ばいせん)機で、毎朝70キロものコーヒー豆を焙煎し、夕方には顧客に届ける。当然、店でいれるコーヒーも自家焙煎。
ヘッド・バリスタのサンディさん(23)はスラバヤ出身のコーヒー好き。俳優の山田孝之似のヒゲがりりしい。もともとコーヒー豆を精選する仕事をしていたが、バリスタになるためにバリ、ジャカルタと渡り歩き、14年から同店で働き始めた。経験を買われ、焙煎も担当。焙煎度合いは「ライトからミディアムローストが多い」とニヤリ。
店舗マネージャーのサダットさん(31)の一押しは「マラバル・ナチュラル」豆で入れたブラックコーヒー。というのも、同店はオーストラリアで今春開催された「メルボルン国際コーヒーエキスポ」に初参加。オーストラリア国際コーヒー賞国際焙煎部門で総合優勝を果たした。また、プランジャーコーヒー部門で銀メダルを受賞したのが「マラバル・ナチュラル」なのである。
店員と話しながらコーヒーの出来上がりを待つ時間は小規模だからこそ。一杯2万5千〜4万ルピアで「伝統的でありながら大胆な独自手法を用いた焙煎は尊敬に値する。豆本来の香りと風味が気品を引き出され、気品がある」とエキスポで評されたコーヒーが楽しめる。(中島昭浩、写真も)
◇TANAMERA COFFEE
住所 THAMRIN CITY OFFICE PARK AA 07
Jl. Kebon Kacang Raya, Jakarta
☎ 021 2962 5599 / 5678
営業 午前7時〜午後8時(年中無休)