【スナンスナン】本公演 12月13、14日 学生ミュージカル劇団 en塾 「時代検証アプリ192」
インドネシア人学生による日本語ミュージカル劇団en塾の本公演が1カ月後に迫ってきた。4月に念願の日本公演を終え、急ピッチで公演の準備を進めている。21大学から集まった73人の練習風景をのぞいた。
6月、半年後に迫った「時代検証アプリ192」の台本が公開された。7月、オーディション。本格的に練習が始まったのは8月中旬だった。今年の4月に日本公演があったため、例年より2カ月ほどスタートが遅くなったという。本番まで約1カ月。
団員らは大学に通いながら休日をen塾の練習に費やす。団長のビラさんは「すばらしい作品にしたい」と話す。
団員たちは3つのチームに分かれて活動している。演技部、舞台美術部、衣装部だ。それぞれの持ち場で力を発揮している。
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●音楽をつくる
団員のトレスさんは劇中歌11曲のうち6曲を作った。甲斐切さんが「天才」と太鼓判を押すほどの、音楽を生み出す。トレスさんは台本をもらってからわずか1週間で全ての曲を作曲。選考で6曲が採用された。
トレスさんは今回初めて演歌調の音楽を使用。江戸の陽気な街や人を表現したかったという。歌詞を読んでイメージを膨らませる。そして実際に歌われるときがうれしい。今作品はトレスさんにとって「今までの中で自信作」で、歌い手も力があるメンバーがそろったという。「つい口ずさんでしまうようなメロディーを聞いてほしい」と話した。
●演技を指導
臼井悦規さんは今年9月から殺陣のシーンの演技指導を担当した。臼井さんは幼い頃に習っていた柔道をエンターテインメントで表現したいと、俳優を始めた。
臼井さんは初めてのアクションシーンに悪戦苦闘する団員に、木刀の使い方から足裁きなどを指導した。「失敗したときにうまくごまかすことで演技力が試される」と話す。
●空間を作る
本公演で照明を担当するのが、秋元国俊さん。2011年の「雪女」から毎年参加している。en塾について「学生のピュアなパワーを感じる」と話す。もともと演劇が好きだという秋元さんは、指導する甲斐切さんから照明の協力を依頼された。秋元さんは自分の役割を「空間作り」という。台本を読み、打ち合わせを重ねて作品に色を足していく。実際に参加するのは通し稽古から。照明器具を握るのは当日朝のリハーサルと本番だけだ。en塾の魅力を「彼らが発散するエネルギーはいつも純粋で真っすぐ」と話す。(西村百合恵、写真も)
江戸の人々と交流
惑星バリドゥの人型アプリケーション「コード192」は、江戸の町に送られた。任務は江戸時代に起きた火事の情報を本部へ送り、1年後の同じ時間に戻ってくること。仮に戻ってこれなければアプリは強制終了される。コード192は伊國(イクニ)と名前を変えて江戸の火事を調べはじめた。
伊國の仕事は情報収集で、禁忌は「感情を持つこと」だった。しかし伊國は江戸の人たちと過ごすうちに感情や思考を持ち始めるようになった。次第に人間になりたいと思う伊國には、帰還の日が迫っていた。
■ en塾 ジャカルタ・コミュニーケーション・クラブ(JCC)の甲斐切(かいきり)清子代表(当時)が、「インドネシアの若者と何かしたい」と考え、2009年1月21日に設立した。メンバーは大学1〜4年生までが所属し、毎年数十人が卒団する。オーディションで選ばれた新団員が入団し、毎年変化するメンバーで、年末、ジャカルタ芸術劇場で本公演を開いている。舞台、衣装、音楽などすべて自分たちで作り上げる。縁日祭やジャカルタ日本祭りなどにも出演。今年4月には熊本と東京で公演を果たした。