「運転手になりたい」　最年少バス従業員の素顔　パサールミングのコジャン君

　南ジャカルタ・パサールミングとマンガライを結ぶバス、メトロミニ・６２番線で１４歳の少年が働いている。少年の名前はムハンマド・ザフリ・アルヤント君。仲間からは「コジャン」と呼ばれている。同地域では最年少のバス従業員だ。コジャン君の素顔を追った。

■家族と離れて一人
　コジャン君は南ジャカルタ・パサールミングで生まれ育った。小学校を卒業した時、両親が離婚した。母親は再婚したが、２年前に経済的な理由から東ヌサトゥンガラ州で農業をしたいと、当時８歳と１歳のコジャン君の弟たちを連れてジャカルタを離れた。母親は「あなたの年齢はジャカルタで働くことができる。学校に通いたいなら自分でお金を稼ぎなさい」と言い残した。
　仕事を探す毎日が続いた。いくつかの仕事を経験し、その中からメトロミニの仕事を選んだ。現在午前８時から午後１０時まで主に乗客をメトロミニ車内に案内し、運賃を徴収する係をしている。週に４、５日働き、日当は５万〜７万ルピアほど。時々、先輩バス運転手に付き添ってもらい、運転の練習をする。マンガライのバスターミナルなどで、バスを移動させるためにハンドルを握る。運転免許証は１７歳から取ることができる。「３年経ったら運転免許証を持って運転ができる。早くバスを運転したい」という。

■その日暮らしの生活
　休憩中のバス運転手や従業員たちのたまり場になっている国鉄線路沿いのビリヤード場で、コジャン君はビリヤードをし寝泊まりしている。パサールミングに母親の兄弟の家があり、一緒に住んでいるというが、帰るのは１カ月に１度ほど。「家には帰りたくない。仲間といるほうが楽しいから」。
　ワルン店店主のドディさん（４０）はコジャン君の生活ぶりを「その日暮らしの生活を送っている」という。ドディさんによると、ビリヤード代金は１時間２万ルピア。仕事が終わる午後１０時ごろから、１〜２時間ビリヤードをする。食事代を含めれば、日給５万〜７万ルピアはなくなってしまう。
　同僚のアンディ・クリスティオノさん（３３）は話す。最初はコジャン君の年齢を聞いて驚いた。一緒に働く仲間たちは１９〜５０歳くらいまでの男女。メンバーのなかでは最年少だが「彼は熱心に働いている。年齢は関係なく仕事に対してとてもまじめ。一緒に働く仲間として接している」と評価している。「境遇を考えたら、受け入れざるを得ないだろう」と話した。ビリヤードも大人顔負けの腕前だそうだ。
　「お金が貯まったら、オートバイを買いたい。ジャカルタのいろんな場所を見て回りたいから」とコジャン君は目を輝かせた。給料は少なく不安もあるが、他に仕事が見つからない。将来については「これからもずっとここで働き続けたい」とだけ語った。（山本康行、写真も）