【人と世界】「価格比較」にクリック 辻友徳さん(26)
「富士山でいうと、まだ二合目」。インドネシアで家電価格比較ウェブサイト「プライスブック」を立ち上げた辻友徳さんはビジネスを登山に例えた。ひとりジャカルタに降り立ち、会社を立ち上げたのは昨年12月。インドネシア人の社員2人と「自分たちのサービス」作りに取り組む。
サイトでは携帯電話やコンピュータ、カメラなど商品をあらゆる角度から比較する。さまざまな機種の機能もアイコンからひと目で分かり、価格とともに一覧表示される。ページの左側には発売時期、OS、キーボード入力、価格帯、レビューの項目が並び、利用者が重視するものをクリックすれば比較もより効率的にできる仕組みだ。
また人気商品もピックアップ。アクセス・ランキングのトップに表示されたのは183万ルピアのスマートフォンだ。アイフォーンの旧モデルも上位に食い込む。100万ルピア以下の携帯が405種類も紹介され、見比べていくのも楽しい。利用者が知りたい情報を整理して素早く表示する利便性が受け入れられ、開設から半年でサイトの閲覧回数は月数十万回に達した。
■自分の手で育てる
自ら創意工夫する青年実業家。以前の仕事で自分がサービスの全てに関わることができず、違和感を感じた。そこで社員の採用はビジネス向け交流サイトを利用、ビザの取得は友人の父に頼み、オフィスは自分の足で歩いて探した。「以前は保育園に子どもを預けっぱなしにしているような距離感があった。今は自分の手で子どもを育てているような満足と責任を感じている」。
来イして1カ月間はインドネシア料理を口にできなかった。オフィス近くの窓もない狭い部屋で暮らした。辛い私生活のようにも見えるが「仕事をしに来てるから生活の環境は気にしない」と言い切る。
モスクワ、ニューヨーク、日本で教育を受け、シンガポールで働いた末にたどり着いたのがジャカルタだった。東南アジア最大の携帯電話市場や年々急伸する購買力、大量の情報弱者に着眼した。しかし、会社設立が決まるまでインドネシアとの接点はなかった。
初めてジャカルタのショッピングモールを訪れたとき、期待に胸が高鳴った。数値でしか見たことのなかった市場が想像以上のエネルギーで目の前に広がっていた。「2、3年後にはマーケットリーダーになる」。
開設から日は浅いが、閲覧数の伸びとともに利用者の期待は高まる。「でもまだ2合目にたどり着いたばかり」。ウェブサイトの改善には余念が無い。商品の在庫状況やページデザインを確認しながら「明日はこれを直そう」と画面に向き直った。(月岡亜梨沙、写真も)