「en塾」日本で初公演 安倍首相を表敬訪問 団員60人「桜よ」合唱
インドネシア人学生日本語ミュージカル劇団「en塾(エンジュク)」の団員60人が今月2日から10日まで日本を訪れ、東京と熊本で初公演した。また福島大学で学生と交流し、震災からの復興を祈って作られた「桜よ」を合唱。16日には安倍首相を表敬訪問し、総理官邸で同曲を披露した。
4日の東京公演(四谷区民ホール=東京都四谷区)のチケットは完売した。満員の観客約500人を前に、総勢60人が創作ミュージカル「吾輩はニャンコである」を上演。2時間で11曲を歌い、最後に「桜よ」を出演者全員で合唱した。
6日は熊本県立劇場(熊本市中央区)で、熊本インドネシア友好協会の主催で上演。1200人の観客が来場した。訪れた観客からは「歌も踊りも学生がやっているとは思えない」と称賛の声もあった。青年海外交流事業「JENESYS2.0」の一環で、8日には福島大学(福島県福島市)で同大合唱部と歌声を披露し合った。
10日までの滞在を終えた団員らは帰国の途についたが、13日に団員3人が再び訪日。15日に都内で開催された国際交流基金の「文化のWA(和・環・輪)プロジェクト〜知り合うアジア〜」発足記念式典、さらに16日に首相官邸で「桜よ」を披露した。安倍首相は15日の記念式典でも「桜よ」の一節を紹介するなど、en塾の活動をたたえた。作曲したファドリさんら団員3人は首相の前で、緊張した面持ちで歌声を響かせた。
■「こだわり」応える
「日本のプロフェッショナルを見せてあげたかった」。en塾を2009年に設立し、演技などを指導する甲斐切清子さんは団員らとの日本滞在を振り返り、涙を浮かべた。通常、音響や照明はすべて団員自ら行うが、日本公演ではプロの演出家らが直接指導した。叱られながら必死に演出装置を操作する団員らの姿を見たとき、甲斐切さんの胸が熱くなった。「日本人のこだわりぬく精神に懸命に応えようとしていた。これが日本人の姿なのだと伝わった瞬間だと思う。それが何よりうれしかった」と言葉を詰まらせた。
en塾はインドネシアで日本語を学ぶ大学生によるミュージカル劇団。在学中の活動のため、限りある時間の中で練習に励んできた。遠い夢だった日本公演が早くも実現したのも「まさにen(縁)」。縁があって出会った仲間と共に、目標に向かって円熟するようにと思いを込めて作られた劇団が、一つ夢をかなえた。(西村百合恵)