【じゃらんじゃらん特集】「開発の父の偉業」たたえる ジョクジャカルタ スハルト博物館
昨年6月、ジョクジャカルタにあるスハルト第2代大統領=2008年1月死去、当時86歳=の生家跡地に記念博物館が開館し、スハルト時代を懐かしむ観光客らでにぎわっている。
古都中心部から西へ車で約40分。バントゥル県クムスック村にある博物館はジャワの伝統建築様式ジョグロの平屋で、高さ5メートルの銅像が来場者を迎える。
3620平方メートルの敷地内には、巨大スクリーンを設置した東屋や図書館もある。生家は取り壊されて久しいが、スハルト氏が使っていたという井戸が残されている。
館内には故人の偉業をたたえる展示物が並ぶ。異父弟の実業家、プロボステジョ氏の肝いりで造られたということもあり、最新技術を駆使している。タッチスクリーン式ディスプレイでは、晩年住んでいた中央ジャカルタ・メンテンの邸宅内部の様子を紹介。客間や居間など各部屋、大きな鳥かごが並ぶ中庭などを写した360度写真が次々飛び出す。小学生の団体がスハルト邸に招かれたような気分を楽しんでいた。
軍人として名を挙げた西イリアン解放作戦、クーデター未遂「9.30事件」や「赤狩り」。インドネシアの歴史に残る大事件の数々は、ここでは「スハルト氏の手柄」としてたたえられている。
9.30事件で、共産党系将校に殺害された陸軍の高級将校6人と将軍の娘の銅像が天井からつりさげられ、悲痛な叫びをあげている。事件後に吹き荒れた赤狩りの原動力を見せつけるかのような演出だ。
博物館の周辺には普通の民家が並ぶ。隣に住むビヨノさん(78)は軒先にスハルト氏のTシャツをつるし、訪問客に売っている。「今でもこの村にはスハルト氏の遠縁の親族がたくさんいる。博物館にはユドヨノ大統領ら高官も訪れ、プロボステジョ氏も毎月来るようになった。村おこしにつながれば」と話した。(配島克彦、写真も)