【顔】ジュスリ・マトニリさん(22) コーヒー売り、路上颯爽と
故郷にはない夜の街がまぶしい。夕方から翌日未明まで中央ジャカルタを自転車で走り回る。仕事帰りのサラリーマンや繁華街にたむろする若者。一杯2千ルピアからのコーヒーを売る。
「新しい環境に飛び込みたかった」。19日、東ジャワ州マドゥラ島からジャカルタに来た。2日間のバス移動。婚約者、両親のことは気がかりだったが、都会を思い浮かべると心は踊った。
マドゥラ島では親の農作を手伝い、マンゴーを売り歩いた。今でこそ恋しい故郷だが、変化のない毎日に耐えられなかった。「ジャカルタで成功したコーヒー売りが世話をしてくれる」。友人の誘いに飛びついた。
ハジ・ウスマン。マドゥラでその名前を知らない人はいない。1970年代にジャカルタの路上でコーヒー売りを開業、今や部下約200人を抱える大物。貯金がなくても、最初1カ月分の原資を分け与え、寝床も提供してくれる。借金は少しずつ返せばいい仕組みだ。
「貯金が貯まれば独立したらいい」。ウスマンさんからはそう声を掛けられた。親父に背中を押された思いだった。いつか成功し、マドゥラ島に帰る。(上松亮介、写真も)