全国各地で犠牲祭 牛やヤギを贈る
犠牲祭(イドゥル・アドハ)を迎えた六日、早朝から全国各地のモスクで礼拝が行われ、街中に神へ祈りを捧げる声が響き渡った。富裕層から寄贈された牛やヤギが解体され、貧困層の人たちに配られ、全国各地で二億人を超えるムスリムが平穏に祝った。(高橋佳久、写真も)
中央ジャカルタのイスティクラル・モスクには数万人が礼拝に訪れた。ユドヨノ大統領夫妻、ブディオノ副大統領夫妻や閣僚、ジャカルタ特別州のファウジ・ボウォ知事なども参加し、朝の七時から白や薄い緑色の礼拝服であるムクナを着た女性や、黒い帽子(ペチ)や腰巻きを巻いた男性が礼拝を行った。
同日午後四時からは、ユドヨノ大統領らが寄贈した牛の解体が行われた。ユドヨノ大統領が寄贈した牛の重量は一・二トン、ブディオノ副大統領が寄贈したのは一・一トンと大型の牛。
今年、イスティクラル・モスクには牛が計六十頭、ヤギは計二十七頭が寄贈された。昨年は牛が十七頭でヤギが三百二十八頭だった。トルコのイスラム団体から牛が四十五頭寄贈された。
七日午前三時半からイスティクラル・モスクで肉の配布のための引き換えクーポンが一万枚用意され、一キロの肉と交換する。
■洪水、噴火被害にも
先月末から大雨により洪水に見舞われている南ジャカルタ・ポンドックラブのカンプン・プロでは六日、財団などから三頭の牛と十七頭のヤギが寄贈され、解体された。
住民のブディ・クリストノさんは「洪水に見舞われても犠牲祭を祝えることに感謝」と地元メディアに語った。一方で、肉を分け与えられた住民の中には、家が洪水で水浸しの人もおり、調理ができないと困っている人たちもいるという。
昨年十月二十六日にジョクジャカルタで発生したムラピ山噴火の被災者向けには、シンガポール人のムスリムにより、二百頭のヤギが贈られる。
八日にジョクジャカルタ特別州スレマン県チャンクリンガンで、解体が行われ、六千人分の肉が配布される。
西ジャワ州バンドン市では、ダダ・ロサダ市長が六日、市民向けに八百二十頭のヤギと七十五頭の牛を贈ると発表した。同市長によると、支援は約二十億ルピアに及ぶという。
東ジャワ州スラバヤのスラバヤ地方裁判所前では、解体の後、一人当たり五百グラムの肉が二千人に配られた。老若男女が午前十一時ごろから並び、午後一時の配布開始から一時間で肉はなくなったという。
◇犠牲祭
預言者イブラヒムが、最愛の息子を犠牲にし、神への忠誠を示そうとしたコーランの逸話に基づくイスラムの慣習で、ムスリムにとって最も重要な行事の一つ。イスラムの暦であるヒジュラ暦で、聖地メッカへの巡礼のピークの翌日となる巡礼月の十日から四日間続く。ヒジュラ暦は太陰暦で一年が三百五十四日のため、毎年、太陽暦から約十一日ずつずれる。逸話に基づき、犠牲祭は二人の信仰心の深さをたたえる日として定められている。