退職後、人材育成に挑戦 NISVAボランティア
日本財団が設立した技能ボランティア海外派遣協会(NISVA)によって派遣されたシニアボランティアがインドネシアの若者を育成しようとそれぞれの分野で活動を始めている。東ジャカルタのボゴール・ラヤ通りのパナソニック・マニュファクチャリング・インドネシア(PMI)社の敷地内にある松下ゴーベル財団で二十一日、今年から派遣された二人がワークショップを開催した。「健康管理と救急処置法」では、同財団やインドネシア金型工業会が協力。「塗装作業の安全と基本作業」では、同工業会とA&Kテクニク・ジャヤ社が協力した。会場には、二つのテーマについて通訳を交えながら、日本で学んだ心構えや技術を伝えようと奮闘する姿があった。
◇「何でも楽しくモットーに」―満薗さん
満薗孝子さん(五五)は鹿児島県出身。婦長まで務めた看護師としての三十年間の経験を生かそうとウェブサイトでNISVAに応募し、七月に来イした。退職後、二〇〇七―〇九年には、娘家族のいる米国で英語を学んだ活発な人だ。
松下ゴーベル財団の一室には、人工呼吸や心臓マッサージを練習する二体の人形が置かれた。
工場に勤務する女性、保育園の保母ら十人が参加。満薗さんは、二十一日まで二日間のワークショップで、手洗いとうがいの重要性、工場などで事故が起きた際の救急処置などについて指導した。
満薗さんは「皆でにぎやかにやっている。初めてのワークショップだったので、自分ができる範囲からやっていきたい」と語る。経済成長とともに活発になる工場での生産活動を背景に、これからも応急処置や健康管理の大切さを現場で働く人たちと一緒に考えていきたいという。
「勉強でも仕事でも楽しくなければ本物じゃない」が満薗さんのモットーだ。小学生のころ、図書館で読んだシュヴァイツァーの伝記に感銘を受けて以来、夢だった海外でのボランティア。ワークショップでの満薗さんの指導には、熱が入っていた。
◇「同じ目線でともに学ぶ」―末永さん
「ほら、もっと見えるように前に来てごらん」。日焼けした笑顔で、大きな手を参加者の肩に当てた。
末永順昭さん(六四)は日産自動車を定年退職後、群馬県の企業で働くなどし、インドネシアのNISVAボランティアになった。
末永さんは、「塗装作業の安全と基本作業ワークショップ」で、静電塗装における作業時の服装から基本的な器具の扱いを丁寧に説明した。「『なぜ』を大切に指導」を行い、理由付けや動機付けをしていくことが安全で品質の良い作業につながっていくとの考えからだ。
若手の技術者十人とともに行ったワークショップをきっかけに、末永さんは「一緒に勉強をしながら、ともにステップアップ」をしていきたいという。
末永さんは東京都の出身。「(以前いた企業の)先輩方から学んだ引き出しから、全部をインドネシアの人に伝えたい」と意気込みを語る。今後も、インドネシアの地元企業を訪問し、現場管理の指導を行っていく予定だ。