全国で中国正月祝う イ中関係「良好だが慎重に」
春節(中国正月、イムレック)を迎えた10日、約1千万人といわれる全国各地の華人は中国寺院などに集まり、新年を盛大に祝った。スハルト独裁政権の弾圧後、アブドゥルラフマン・ワヒド元大統領(グス・ドゥル)が2000年、華人文化を自由化、02年末にメガワティ元大統領が国民の祝日に定めてから今年で11回目の中国正月。デパートや商店街にも豪勢に新年を祝おうと呼び掛ける「恭喜発財」の文字が溢れ、真っ赤な装飾が街を彩る行事となった。一方でインドネシア経済が発展する中、華人社会では祖先の母国としてだけでなく、世界経済を左右する大国・中国との新しい関係にも関心が高まっている。(赤井俊文、写真も)
西ジャカルタ・グロドックの中国寺院「金徳院」と「大史廟」には、首都圏各地から華人の参拝者がひっきりなしに訪れる。煙が立ちこめる寺院内で線香を頭上に高く掲げて祈りを捧げたり、「迎春」「平安(今年も無事でありますように)」などと金色の文字が刻まれた巨大な赤いろうそくに火を灯したりしていく。
参拝者は若者も多い。華人文化が弾圧された時代の記憶を持たない世代だ。ダニエル・クス・ヘンドルソさん(24)は「華人は中国人が自分たちとよく似た友人だと思うようになっている。中国語を話せる華人が増えればもっと交流が深まり、仕事も増えるなど互いに利益がある」と話す。
会計関係の仕事をしているフェンドリさん(30)は「私は3代目の華人。中国人がたくさんインドネシアに来るようになったが、いろいろと複雑な状況になってきている。現在のところ、両国は悪くない関係が築けていると思う」と語った。
金徳院から少し離れた大史廟は高齢者の参拝客が多い。大史廟の手伝いに来ていた男性(70)は、華人が苦しんだ時代のスハルト時代を経験した一人だ。「当時は中国語も、自宅やこうした中国寺院でこそこそとしか話せず、真っ赤な提灯も飾れなかった。グス・ドゥルが自由化したが、話せる人はまだ少ない。中国語教育はまだこれから」と語る。
参拝にきた30歳の女性2人は「中国製家具や、中国で製造された日本企業の自動車・二輪車の部品が輸入されたりと、イ中両国の関係は加速していると思う」と口をそろえたが、中国人との関係については「まだお互いに様子見というところ」と慎重に話していた。