初の本格防災映画 「海からのメッセージ」 29日夜、メトロTVで放映 著名監督のリリさん制作
自然災害が多発するインドネシアで、映画を通じて防災意識を高めてもらおうと制作された「海からのメッセージ(Pesan dari Samudera)」が29日(土)午後9時半(西部インドネシア時間)から、民間テレビ局のメトロTVで放映される。インドネシアと豪州の赤十字、両国政府が2010年に立ち上げた豪州インドネシア・災害軽減ファシリティー(AIFDR)、インドネシア国家防災庁(BNPB)が企画し、国内最大のヒット作となった「虹の兵士たち(Laskar Pelangi)」(08年)などを手掛けた映画監督のリリ・リザさんとプロデューサーのミラ・レスマナさんの映画制作会社マイルズ・フィルムズが制作。76分の作品は、インドネシアで初めてとなる本格的な防災映画として話題を呼びそうだ。
舞台となるのは、1992年12月12日に地震・津波が起こり、約2千人が死亡・行方不明となった西ヌサトゥンガラ州フローレス。26日で地震・津波から8年を迎えたアチェにしなかったのは、「あまりにも被害が大きすぎて、自然災害はどこででも起こりうるというメッセージが伝わりにくい」(ミラさん)との配慮からだ。東フローレス県ララントゥカなどで撮影を行ったが、エキストラとして出演する市民の間では、まだ地震と津波に対するトラウマが強く残っていることから、作品では地名を変えているという。
ジャカルタで暮らす夫、妻、息子の3人家族が地震と津波を契機に家族の絆を再確認するというストーリーに、津波が起こった際には、パニックを起こさず速やかに高台などへ避難することの大切さなどのメッセージを盛り込んだ。主演は、ルクマン・サルディ、プトリ・アユディヤ、アンディ・ブルサマなど。
ミラさんによると、最初に両国の赤十字などから話があったのは5年ほど前。これまでのありきたりな啓発ビデオではないものを作るためにはどうしたら良いかと相談を受けたという。
その後も話し合いが何度かあり、昨年ごろ最終的に制作の依頼を受けた時には「天命だと思った」とミラさん。直接的な防災対策の指南ではなく、一つの映像作品の中に自然と防災の意識を高めるようなメッセージが入ることによって、人々の心により染みわたるような効果を目指した。作品の内容について、赤十字などからの注文は一切なく、むしろ作品内にある赤十字の支援シーンは必要ないのではと提案されたほどという。
リリさんが監督、自身はプロデューサーを務め、脚本は「Ada Apa Dengan Cinta?(邦題・ビューティフル・デイズ)」などを手掛けたプリマ・ルスディさん、撮影はヤディ・スガンディさんなど内外で受賞歴がある一流の映画人が制作を担った。今年9月から10月にかけ、撮影を行い、完成させた。作品の詳細はウェブサイト(www.pesandarisamudra.com)でも見ることができる。
今後、地震・津波だけでなく、地滑りや火山などをテーマに、シリーズ化していくアイデアも上がっているという。(上野太郎、写真も)