ノケンが無形文化遺産に 「緊急保護リスト」入り パプアの伝統かばん ユネスコ
国連教育科学文化機関(ユネスコ)は4日、フランス・パリで開いた第7回無形文化遺産保護の政府間委員会で、パプア地域に伝わる植物の繊維で作ったかばん「ノケン」を「緊急に保護する必要がある無形文化遺産のリスト」に認定した。インドネシアの文化が無形文化遺産に認められるのは4年連続。パプアの伝統文化保護とともに、インドネシア国民のパプアへの理解が深まる機会になりそうだ。(堀田実希、写真も)
2008年からノケン保護の活動をしてきたパプア生態系協会のティトゥス・ペケイ会長によると、ノケンは木や葉、植物の繊維で作られたかばん。パプアにいる280以上の民族ごとに独自の模様や形がある。女性が作り手となり、母から娘へと継承されてきた。目的別に様々な大きさや形があり、赤ん坊や動物、収穫物、生活必需品の持ち運びや、貴重品や食料を収納する袋として日常的に使われていた。
しかし、1970年ごろから代替品となる工場生産のかばんがパプアに普及し、ノケンは日常生活の場から徐々に姿を消した。パプア州の首長選挙などでは投票箱の代わりにノケンを使う自治体もあるが、通常は伝統儀式で使われるのみ。作り手も激減し、消滅の危機にあるという。
教育文化省文化総局のロセリ・ロスディ・プトゥリ文化振興・外交局長によると、今後、パプアの学校教育、地域教育の場でノケンについて学ぶ授業を取り入れるという。パプアを除いた地域でノケンの認知度が低いことから、2013年には各地でノケンの展示会を行うなどして周知活動に力を入れる方針だ。
■「パプア人の象徴」
「ノケンはパプアの生き様を写す、パプア人の象徴」と、ティトゥス会長。パプアでは子どものころから一人一人が自分のノケンを持ち、所有物はその中に入れて管理し、ノケンを通じて「他人の物を取らない」など、パプアの伝統に根ざしたやり方で道徳観を学んできたという。しかし、そのような文化もノケンの存在とともに廃れていったと指摘。今回の認定を契機に、パプアの人々がかつてあった価値観への認識を再び高めることに期待した。
ジャカルタでは、東ジャカルタのタマン・ミニ・インドネシア・インダか工芸品の展示会などでしか見る機会がない。ティトゥス氏は「将来的に自治体から予算をもらい、パプアの生産者がジャカルタなどでノケンをアピールする機会を増やしたい」と語った。
■緊急保護は4件
ユネスコは、無形文化遺産を「慣習、描写、表現、知識及び技術並びにそれらに関連する器具、物品、加工品及び文化的空間であって、社会、集団及び場合によっては個人が自己の文化遺産の一部として認めるもの」と定義している。
3日から7日に行われた無形文化遺産保護の政府間委員会で、ノケンの他にウガンダの伝統音楽と舞踊「ビグワラ」など3件を緊急保護リストに入れた。日本からは、豊作を祈る伝統芸能「那智の田楽」(和歌山県)が無形文化遺産の代表リストに登録された。