「新しい政治文化に」 早期決断に好意的評価 首相毎年交代の日本と比較も アンディ前国務相辞任
7日に民主党幹部のアンディ・マラランゲン前青年スポーツ担当国務相が辞任したことについて、民主党幹部の相次ぐ汚職疑惑で連日、ユドヨノ政権に批判的な報道を展開してきた地元メディアは「新しい政治文化を作る」(コンパス紙)など好意的に報じている。これまで多くの閣僚が汚職への関与が指摘されつつも批判をのらりくらりとかわし、起訴や拘置された後も地位に居座り続ける地方首長もいる中、容疑者断定が発表された翌日の電撃辞任が、第2期政権も後半に突入したユドヨノ政権下でもはびこり続ける汚職文化を一掃する契機になればと評価した形だ。
アンディ氏をめぐっては、汚職撲滅委員会(KPK)が7日、西ジャワ州ボゴールのハンバラン競技場建設費の不正流用に関与した疑いで容疑者に断定したと公表。事件では公金が民主党幹部に流れたとみられている。
コンパス紙は社説で、起訴されるまでは閣僚職を続けることができると法律で規定されている中で、容疑者断定の公表から12時間に満たない短時間に辞任を決意したアンディ前国務相を賞賛。「アンディ氏が透明性を持って、ハンバラン競技場の建設事業で何が起きたかを開示していくことを望む」と期待を示した。
英字紙ジャカルタポストは、「容疑者に断定されても、地位にすがりつく地方首長や、監獄の中から自治体運営を続けようとする者もいた」中で、「国家中枢の権力の中にいたアンディ氏」の辞任は「先例になる」と強調した。
メディア・インドネシア紙は「この5年で153人の公務員が汚職罪で収監されている」とのデータを示し、行政の腐敗が進んでいると指摘。「すべての公務員が、汚職への関与を指摘されたらすぐに役職から退くようになれば、この国が高い尊厳のある状態へ向かっているということになる。その道をアンディ・マラランゲンという一人の人間が切り開いた」と訴えた。
■「ヒーローではない」
閣僚の交代は日常茶飯事で、首相も毎年替わる日本と比較する専門家もいる。日本国内では辞任の連発は政治の混迷の象徴となっているが、疑惑が持ち上がった段階で辞任する「文化」に、インドネシアでは一定の評価が示されている。
インドネシア調査研究所(LSI)のブルハヌディン・ムフタディ氏は「日本や韓国だったら、容疑者となる前に辞任していただろう。政治では法的な問題だけでなく、信用の問題も重要だ」と主張。就任後、間もない時期から汚職騒動が持ち上がりつつも辞任の判断が遅れたとアンディ前国務相に厳しい評価。
政治専門家のディアン・プルマタ氏は「日本を見てみるべき。何人も辞任しているが、ヒーローとはほど遠い。メディアはアンディ氏をヒーローと拙速に呼ばない方が良い」と、賞賛が相次ぐ風潮に批判的な見解を示した。