あす、国内封切り ティモール独立が残したもの 「アタンブア39℃」

 東京・六本木で先月あった第25回東京国際映画祭で、最高賞の東京サクラグランプリを争うコンペティション部門の15作品の一つに選ばれた「ティモール島アタンブア39℃」(リリ・リザ監督)が8日、インドネシアで公開される。
 1999年に独立を決めた直後の東ティモールに妻と娘を残し、インドネシアとの国境沿いにあるアタンブアに逃れてきた父ロナルドと息子のジョアオ、亡くなった祖父の霊を弔うために東ヌサトゥンガラ州の州都クパンからアタンブアに戻った女性ニキアの3人が主人公。酒におぼれるロナルドとの関係に悩みながら、13年前から離ればなれになった母親との再会を願うジョアオは、ニキアと出会い、2人の関係は少しずつながらも進展していく。それぞれの心に傷を抱えながらも力強く生きていく人々の姿を描いた詩情あふれる物語だ。
 総制作費は12億ルピア(約1千万円)で、国内最大のヒット作となった「虹の兵士たち(Laskar Pelangi)」(08年)の10分の1ほど。カメラはデジタル一眼を使い、ジャカルタからのクルーは13人と低予算だが、こうもりの大群が飛来する冒頭のシーンから上質な映像美で魅せ、人間という存在を鋭く切り取ったリリ監督の洞察眼に裏打ちされた登場人物の心の揺れ動きが繊細に描かれている。ドキュメンタリーではなく、政治的なメッセージも排除されているが、歴史にほんろうされる登場人物の姿を通じ、今なお、困窮した生活を続ける避難民たちの現状が浮き彫りになるような仕上がりとなっている。
 リリ監督とともに、作品を作り続けてきたプロデューサーのミラ・レスマナ氏は「東ティモールからの避難民たちは、独立直後はたくさんの支援があったが、今では忘れ去られた存在になっている。貧困や教育の不足など依然として問題は多い」と制作に至った背景を説明した。
 全編テトゥン語で、インドネシア語字幕。ジャカルタを中心に国内の劇場20館で上映される。

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