「ジャワの文化 後世に 宮廷舞踊家のムルティヤ氏 福岡アジア文化賞受賞 ジャカルタで記念式典
アジアの人々が相互に学び合いながら幅広く交流する基盤作りを目的に、学術・芸術・文化分野でアジア地域の文化新興と相互理解や平和に貢献した人物を表彰する第23回福岡アジア文化賞の芸術・文化賞を受賞した中部ジャワ州ソロの宮廷舞踊家、クス・ムルティヤ・パク・ブウォノ氏(51)の受賞記念式典(主催福岡市、財団法人よかトピア記念国際財団)が1日、中央ジャカルタ・ジャカルタシアターのXXIクラブで開催された。(小塩航大、写真も)
受賞理由として、野中晶福岡市総務企画局国際部国際課長は「ムルティヤ氏は宮廷舞踊など伝統文化の保護に尽力し、後継者の育成へ力を注いだ。また、ジャワの伝統文化を世界各地で紹介するなどの周知活動を展開し、ジャワの伝統文化が世界へ広く普及するきっかけを作った」と説明。後継者の育成を通じて、ジャワ古来の文化の保存と発展に力を注いできたと評価した。
ムルティヤ氏は「この賞を受賞できたことを誇りに感じる。ジャワの伝統文化を守っていくことはジャワ人の生活を守ることとつながる。一人で伝統文化を保護するのは不可能。政府の財政的、政策的な支援が必要だ。指導者を育成し、次世代へと引き継いでいきたい」と抱負を語った。
またムルティヤ氏の教え子である舞踊家らが宮廷舞踊を披露。この日はムルティヤ氏の誕生日ということもあり、多くの友人や家族が駆け付け、同氏の功績をたたえた。
ムルティヤ氏は1960年に中部ジャワ州ソロ(スラカルタ)のススフナン王家の王女として生まれた。幼少期より宮廷舞踊を学び始め、ガムラン(鍵盤打楽器)やワヤン(影絵芝居)などの伝統文化に慣れ親しんで育った。大学ではジャワ文学を専攻し、伝統文化への見聞を深めた。
時代が進むにつれて伝統文化の継承者不足や認知度の低下を感じた同氏は、ガムラン音楽スリンピ・ソンゴバディをCD化し発売、欧米などで宮廷舞踊やガムラン音楽の公演を披露するなど精力的に活動した。現在は王家教育文化財団代表、国民協議会(MPR)議員を務める。
式典には、ルディ・ルビアンディニ・エネルギー鉱物資源省副大臣、スリスティヨ・ティルトクスモ教育文化省芸術・映画強化部長、鹿取克章・駐インドネシア大使、野中晶福岡市総務企画部国際局国際課長などが出席した。鹿取大使は「ムルティア氏は宮廷舞踊の普及に尽力された。私も宮廷舞踊を鑑賞した際、とても懐かしい気持ちになった」とたたえた。
◇ 福岡アジア文化賞
1990年に設立され、大賞と学術研究賞、芸術・文化賞の三つの賞がある。過去の受賞者には今年のノーベル文学賞を受賞した中国人作家の莫言(モオ・イエン)氏などがいる。インドネシアからはこれまで、歴史学者のタウフィック・アブドゥラ氏、文化人類学者のクンチョロニングラット氏、ジョクジャカルタ王家の舞踊家スダルソノ氏、作家プラムディア・アナンタ・トゥール氏など4人が受賞。今年は12年ぶりにインドネシアから受賞者が選出された。今年で23回目を迎える同賞にはアジア約30の国と地域から約230人の候補者が推薦され、インドネシアからは12人が候補に上がった。今年9月には福岡市で授賞式が開催され、ムルティヤ氏や王宮の舞踊団も出席、ソロの宮廷舞踊を披露した。