日本映画大学で講義 リリ、ミラ両氏 制作の裏話など披露
28日まで東京・六本木で開かれていた第25回東京国際映画祭で3作品が上映され、招待を受け来日していたインドネシアのリリ・リザ監督とミラ・レスマナ・プロデューサーは26日、神奈川県川崎市の日本映画大学で特別講義を行った。(東京で上野太郎、写真も)
映画祭の「アジアの風」部門のプログラミング・ディレクターを務めた石坂健治さんが、自身の講義の時間を使い、同大の1、2年生を対象に実施したもの。約60人の学生が聴講し、映画制作について、学生と意見交換した。
リリさんによるジャカルタ芸術大学(IKJ)の卒業制作(1992年)で、ドイツのオーバーハウゼン国際短編映画祭で賞を獲った「メリーゴーランド」を鑑賞。その後、学生との質疑応答があった。
リリさんは、移動式メリーゴーランドを媒体とした子どもの葛藤や交流などを通じ、人間同士のつながりや児童労働といった社会問題にまで踏み込んだ卒業制作について、「当時、カメラは非常に高額で、大学に2台しかなかった。外で撮ることは禁止されていたが、それでも頑固に外で撮ることを主張し、何とか外で撮った。ライティングなどでトラブルがあり、外で撮ることの難しさを実感し、ストレスがたまったが非常に良い経験になった」と裏話を披露。ミラさんは、94年からリリさんと一緒に仕事をするようになった経験について、「作品を観て、非常に可能性があると思っていた」と話した。
これまでに次々と国内観客動員数の記録を塗り替えてきた一方、「エリアナ、エリアナ」や今回の映画祭のコンペティション部門にも選定された「ティモール島アタンブア39℃」といった低予算でインディペンデントな作品も世に送り出してきたことについて、リリさんは「映画には複雑に重なり合ったプロセスがあり、ユニークな芸術で、監督のアイデアを表現する場でもある。同時に多くの費用をかけ、多くの作業が必要になるため、さまざまなモチベーションが沸いてくる。私の頭の中にある物語を語るとともに、人々により感情的な作用を及ぼすことができるよう、さまざまな技術や編集も試みている。商業的な要素や表現のバランスにも配慮している。できるだけ多くのインドネシア人に作品を観てもらうためにエンターテイメントの要素にも気を配り、国民とのコミュニケーションを図っている」と説明。
ミラさんは、アート系からアクション、娯楽作まで幅広いジャンルの作品が好きだとした上で、「リリ氏と同様、自分たちが作りたいと思うものを作っているという意味においてはインディペンデント。娯楽性が強いものを作るのもそうしたいと思っているから。できるだけ多くの人に観てもらいたいとも感じているからだ。また、前2作は大ヒットとなったが、心地よい位置にとどまってしまうことを非常に恐れており、小作品を作ることを決めた」と話した。
学生からは「娯楽作とアート系のどちらが簡単ですか」などの質問が上がり、「商業的な作品の方が時間や費用がかかるし、観客がどうとらえるかをより考えなくてはいけないので大変」(ミラさん)、「ミラ氏の言う通りだが、そちらでも同じだけの愛を込めて作っている」(リリさん)などと回答。特別講義後、「アタンブア」の上映会にも出た学生は「リリさんは自分が大学生だった時に戻って、やさしい視線で話をしてくれ、とても参考になった」と感想を語った。