「挑戦し続ける」 リリ監督らが記者会見 東京国際映画祭に出展 「アタンブア39℃」

 20日に東京・六本木で開幕した第25回東京国際映画祭で、最高賞の東京サクラグランプリを争うコンペティション部門の15作品の一つに選ばれた「ティモール島アタンブア39℃」の制作会社マイルズ・フィルムズは22日、日本に招待され、24―29日まで東京に滞在する監督のリリ・リザ氏、プロデューサーのミラ・レスマナ氏の2人が出席して記者会見を開いた。
 アジアフォーカス・福岡国際映画祭で「夢追いかけて(Sang Pemimpi)」がオープニング上映された2010年以来の訪日となるリリ監督。
 今年の映画祭では、世界初公開となる「アタンブア」のほか、インドネシアエクスプレス部門では、国内最大のヒット作となった「虹の兵士たち」(08年)、その続編の「夢追いかけて」(09年)の2作が上映される。
 自身にとってほぼ3年ぶりとなる長編作品について、「近年の自分の作品とはまったく異なっている。インドネシアとティモール・レステ(東ティモール)との国境沿いにあり、(独立を決めた1999年の住民投票後の騒乱で)多くの難民が押し寄せたアタンブアという都市では、独立から10年以上経った今でも、トラウマや復讐心にとらわれている人たちがいる。そのような人たちの現在の日常を主役の3人を通じて表現した」と述べた。
 主役を演じる3人は現地の一般人から採用した。脚本を完成させてから配役するという従来の手法ではなく、実際に現地の住民として生活を送ってきた彼らの経験も物語に反映させ、フィクションながらもリアリティーを追求するものとなったという。
 総制作費は12億ルピア(約千万円)と低予算で、ジャカルタからのクルーは13人。照明も最小限に抑え、カメラも一般向けに販売されているデジタル一眼のキヤノン5Dを使用した。
 同様に最小限の機材を使い、母子の絆と誇りを繊細かつ鋭いタッチで描いた「エリアナ、エリアナ」(02年)のような作家性をより強く押し出した作品となったことについて、リリ監督は「この10年間はインドネシアをより深く知るための期間となった。これまでに国内で最も費用を掛けた作品や観客動員数を記録した作品なども出したが、安泰な地位にとどまっていることはなく、常に挑戦し続けたい」と意欲を示した。
 プロデューサーのミラ氏は「2005年ごろまでは東ティモールの難民問題で内外の多くのNGO(非政府組織)が支援活動を行っていたが、その後はほとんどなくなった。忘れ去られそうになっている問題を再び思い出すための手段となることが映画という媒体の一つの役割。アタンブアで別のドキュメンタリー作品を撮っていた時に、『これはやらなければ』と制作を決めた」と経緯を話す。
 インターネットを通じ、一般市民から広く資金を集める「クラウドファンディング」のサイトとして新たに立ち上げられた「wujudkan.com」を通じ、制作費の4分の1の3億ルピアを集めたのも、新たな試みだ。
 作品は来月8日からインドネシアでも公開される。アタンブアをはじめ、地方では映画館がない都市が多いため、東ヌサトゥンガラ州などで野外上映会を行うことも計画している。(上野太郎)

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