「3・11共有を」 グスドゥル生地で上映会 国際交流基金
災害大国同士、3・11を共有しよう―。国際交流基金は27日、故アブドゥルラフマン・ワヒド元大統領(通称グス・ドゥル)の生地、東ジャワ州ジョンバン県ディウィック郡のイスラム寄宿学校「ポンドック・プサントレン・トゥブイレン」で日本映画上映会と講演を行った。
プサントレンはインドネシア最大のイスラム団体ナフダトゥール・ウラマ(NU)の総本山で、国内でも抜群の知名度を持つ。1899年、グス・ドゥルの祖父で、NU創設者のハシム・アシャリ氏が開校。ハシム氏は日本軍政期にイスラム勢力を一元化する宗務部の部長を務めた。
上映された映画「エクレール・お菓子放浪記」のロケ地は震災前の岩手県石巻市や宮城県。筋書きは孤児の少年が放浪の果てに慕う音楽教師と再会し、人生の道筋を掴むものだ。
週に1回だけテレビ視聴を許されている学生たちは映画に熱中。真剣に観て、ユーモラスな表現に笑い、恋愛シーンをからかって楽しんだ。ムハンマド・アブドゥル・ハキム(12)さんは「日本にも貧しい時代があったんだ。何事にもめげない、主人公の心意気が好き」と語った。
サラフディン・ワヒド校長は「日本人から学ばなくてはいけない。日本人は決して諦めず、常に一生懸命に努力する」と学生らに呼び掛けた。08年に日本政府が供与した医療施設についても謝辞を述べた。同校長はグス・ドゥルの実弟で、2004年大統領選に大物退役軍人ウィラント氏の副大統領候補として出馬している。
小川忠・国際交流基金ジャカルタ日本文化センター所長は被災を描いたドキュメンタリー「共感の絆〜北スマトラと東北をつなぐ祈り〜」を参考に、東日本大震災が未曾有の災害であり、日本はいま復興に向けて努力していると伝えた。在スラバヤ日本総領事館の伊藤正毅書記官が日本留学の奨学金について説明。上映会と講演を通して学生約300人が出席した。
プサントレンにはインドネシア全国や海外からの中学、高校、大学生2800人が寄宿し、教師270人が教卓につく。創立以来、高名なプサントレン周辺は教え子らが設立した教育機関などが集まる「門前町」になっている。
ジャカルタ日本文化センターのプサントレン訪問は今回で2回目。3月、東ジャワ州ポノロゴのゴントル・モデルン・プサントレン(イスラム寄宿学校)と同校付属ダルサラム大学で上映会と講演を行った。