「負けて強くなる」 サッカー少年を指導 来イのセルジオ越後さん

 ジャカルタを訪れているサッカー評論家のセルジオ越後さん(66)は21日、西ジャワ州スントゥールのJJCグラウンドで、JJCサッカー部少年部の練習に参加し、子どもらに「負けて強くなるサッカー」を指導した。
 セルジオさんはミニゲーム4試合に出場した。小学5・6年の試合では子どものチームに混ざり、守備陣からチームを指揮した。同じチームで試合した林航大君(11)に「最初のトラップから、スピードを生かせるようにしなさい」とアドバイス。篠田陽介君(11)は「セルジオさんが入って、ボールが流れやすくなった」と語った。
 大人対子ども形式の中学1、2年の試合では、大人チームの中盤に君臨。大人チームが得点を重ねる展開に、子どもチームが不満を漏らすと「勝って鍛えられることはないよ。負けて鍛えられるんだ」と指導。8月中旬に本帰国する齋藤秀介君(12)は「最後のインドネシアでのサッカーで、セルジオさんに会えてうれしい」、目崎翼君(13)は「有名な人と交流できて貴重な経験になった」と目を細めた。
 ブラジルで初の日系人プロ選手となったセルジオさんは、日本リーグ引退後、1978年から日本各地でサッカー教室を行い、ジャカルタでも初めて来イした2002年から、教室を開いてきた。試合後は05年に植樹したブリンギン(ベンガルボダイジュ)の樹木が幹を太くしたのを確かめた。

■日本人は「養殖化」
 同日夜、南ジャカルタのレストラン「ザ・エナジー・カフェ」で行われた「セルジオ越後を囲む会」では、セルジオさんが日本のサッカーや社会をめぐって独自の視点を披露した。
 「応援と分析は違います」。和やかな雰囲気の会の最後に、ひりりと辛いセルジオ節が待っていた。「みんな我が子がかわいい。海外クラブに所属する選手が『(練習の)ミニゲームで3点取った、大活躍だ』と報道する。強くないものを強く見せている。外国人枠の日本人選手がベンチを温めているだけなのに、どうしてクビにならないのか。ちょっとおかしいな、と考えてほしい」とスポーツ報道をちくり。
 日本人が「養殖化」しているとも警告。「日本の選手の子どものころを知っている。土のグラウンドで、汚いスパイクを履いて、膝をすりむいていた。でも、プロになって、ベンツに乗ってスポンサーからスパイクをもらうようになると、『ピッチが悪い』と言う。養殖の魚が生まれるようになった」
 これを踏まえ、出席した在留邦人には「みなさんがアウェイのインドネシアで培ったものを、ホームで心地良い日本の人に、特に若者に伝えてほしい」と呼び掛けた。ほかにも、Jリーグは「(チーム数をいたずらに増やした)水増ししたスープ」、ザッケローニ代表監督は「日本に来る前は失業していた」と厳しい意見を投げかけた。
 セルジオさんは5月、サッカー解説者水沼貴史さんとともに来イする予定だったが、パスポートの期限がインドネシアの入国要件をわずかに下回り、成田空港であえなく断念。今回が「リベンジ」訪問となった。セルジオさんは「(飛行機に)乗れていたら、(囲む会は)1回で終わった。乗れなかったから(水沼さんと今回で)2回になった」とおどけて見せた。
 会の途中に催されたジャンケン大会では、日本代表DF吉田麻也(23)の練習着や、同MF岡崎慎司(26)が代表戦で使用したユニフォームなどの景品を、セルジオさんが提供した。食事に伸ばす手を止め、途端に目の色を変えた出席者が、セルジオさんの手と自分の手を見比べて一喜一憂し、大盛り上がり。終会間際に「今度はパスポートを確かめてから来るよ」と笑いを誘った。 

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