多様性の中の平和 ベンタラ・ブダヤ 伝統芸術、文化遺産を促進

 「多様性」という言葉が何かと顔を出し、日本社会に根付いた価値観や風習などとの摺合せに疑問や議論が飛び交う現代。「多様性」ってそんなに特別なこと?そんなに難しい事だったかな?ふと考えてみると、インドネシアでは建国のスローガン「多様性の中の統一」の理念の通り、文化も経済も「多様性」が基盤であり、300を超えるといわれる多民族の人々によって息を吸うように、水を飲むように「みんな違ってみんないい」な社会が営まれています。移り行く現代社会の中で失われそうになるものや新しく生まれる価値観はあるにしろ、自分が認められるためにはまず他者を認める、自分達の文化を誇り維持するのなら他者の文化も尊重する。このような相互性が根本的に成立していると日常生活の些細なところからも感じる事が多々あります。今回のおすすめ観光情報はそうしたインドネシアの伝統芸術、文化、遺産を促進、再活発化するための取り組みを行う「ベンタラ・ブダヤ」の活動と現在開催中の美術展「多様性の中の平和(Peace in Diversity)」展を紹介します。

 中央ジャカルタ、高層ビルの足元に伝統的市場や商店がひしめきジャカルタの新旧がしのぎを削り合うように混在するパルメラー地区に「ベンタラ・ブダヤ」ジャカルタの拠点があります。日本語で「文化使節」を意味する「ベンタラ・ブダヤ」は1982年9月26日にジョグジャカルタで発足したのが始まり。その後ジャカルタでは1986年6月26日に開設されました。この建物は予備知識が無い通りすがりの人々にもその美しい木造建築は否応なく目を奪われとても特別で歴史的、文化的な何かだろうな、と誰もが認識するほどの存在感です。
 そんな「ベンタラ・ブダヤ」の活動、最近の内容だけを取り上げてみてもとても興味深いものです。例えば、8月下旬に1夜限りで上演された「クロンチョン・ワヤン」。ジャワの伝統芸能である人間が演じる人形劇「ワヤン・オラン」とジャカルタを中心にオランダやポルトガルの影響を受けて広がった大衆音楽であるクロンチョンを融合し、アクロバット的要素も織り込んだ斬新な新舞台は大反響を呼びました。また、9月末に開催された「大地の中のジャカルタ展」ではフェーズ2の延伸工事が行われているMRT工事で発掘された陶器や動物の骨などゾクゾクするような歴史的遺産が展示され、専門家のセミナーでは学芸員や学生達が時間を忘れるほど熱心に質問をしていました。
 現在は、10月6日までジャカルタのムナラ・アストラのアストラギャラリーを会場に「多様性の中の平和展」という現代アートの展覧会を開催しています。「インドネシアという統一国家になる以前からこの地には様々な文化があった」とするエコ・S・ダルマンシャ氏の水彩画の連作、精密なバティック柄でピースサインを表すアリフ・ラフハン氏の「ピース」などじっくり見てみたい作品が並んでいます。
 美術館やアートギャラリーにあえて足を運ぶのは少し敷居が高く感じてしまうこともありますが、ジャカルタの真ん中にあるオフィスビルのギャラリーであれば仕事や食事の合間にも気軽に立ち寄る事ができ、ほっと一息心を潤してくれるアート鑑賞の時間になりそうです。
 世界中の国々の人たちが模索する「多様性」が詰まったインドネシア。皆様もぜひこの国の様々な文化を体験してその醍醐味を味わってみてはいかがでしょうか。(水柿その子 写真も)

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