駆ける、日本の中古車両  「線路際の公園」 南ジャカルタ・クバヨラン

 何かと話題に事欠かないインドネシアの鉄道事情。オランダ統治時代に大規模農園で収穫されたサトウキビ、資材や資源の輸送手段として建設されたノスタルジックな鉄道、一連の成り行きから注目の的となったバンドン高速鉄道劇、現在も日々懸命に続くMRTの延伸工事など、インドネシアの鉄道はニュースの中心になることもしばしばあります。そんなインドネシアの鉄道を日本人の間にも浸透させて人気者の地位に押し上げた火付け役は何と言っても日本から運ばれた中古車両が現在も使用され続けているジャカルタ首都圏の通勤鉄道。今回のおすすめ観光情報は日本の中古車両が目の前で見られる「線路際の公園」を紹介します。

 世界一のテキスタイル市場と名高い中央ジャカルタのタナアバン市場にほど近い通勤鉄道タナアバン駅からバンテン州のランカスビトゥン駅を結ぶランカスビトゥン線。日本人在住者も多い南ジャカルタ、おなじみのクバヨラン地区にも耳慣れた遮断器の音が鳴り響き住宅街や商店街を貫いく線路を頻繁に電車が行き交います。
 ブロック塀で囲われていていたり、住宅や建物で線路がすっかり隠されていたりと駅構内でもなければ見晴らし良く電車を見られる沿線が少ないジャカルタの都心部で地域住民の憩いの場になっているのが通称「線路際の公園」、クバヨラン駅から南に2㌔ほど行ったところにあります。
 本名不明のこの公園はニックネームのとおり線路の両側が緑の芝生と美しい木々で整備された公園です。レンガ敷のトラックもありジョギング用に設置されているほか、ちょっとしたジャングルジムのような遊具もあります。
 過密人口都市ジャカルタということを一瞬忘れるような解放感と見通し、適度に日陰もあり風通しも良く、都会のオアシスという言葉がぴったりの場所という感じです。踏切脇に小さな詰め所があり安全を見守る係員はいますが出入りは自由。日曜午後の訪問時にもまったりと団らんを楽しむ家族連れ、バレーボールやヨガを楽しむスポーツ青年たち、飲み物を手におしゃべりに花を咲かすカップルやグループなど多くの人たちがそれぞれの時間を楽しんでいました。
 電車が通る合図はあの聞き慣れた踏切の音。カーンカーンカーンと響いてくると大人たちが子どもに線路から離れるように促します。20年ほど前にはあった、線路上でカイト遊びをしたり寝そべったり物売りをしたり悪ふざけをしたりという自由奔放な姿はありません。皆安全に秩序を守り左右から電車が走り過ぎていく様子を見ながらそれぞれの時間を過ごしている印象です。「長いね。長いね」といつまでも流れ続ける車両を目で追いながら話している微笑ましい親子の姿が印象的でした。
 日本から鉄道ファンも多く訪れ推しの車両の撮影に熱を入れる様子も度々見かけるインドネシアの鉄道。日没後などは特に周囲も真っ暗になることから、電車にも周囲にも注意をして写真撮影や憩いのひと時を楽しみたいものです。(水柿その子、写真も)
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