脱炭素社会へ日本の貢献と商機

 世界的な気候変動問題への関心が高まる中、インドネシアも2060年に向けカーボンニュートラル(炭素中立)を達成する目標が示されている。このようなインドネシア政府の方針に対して積極的に貢献しようする進出日系企業も多く、また、サプライチェーン全体の脱炭素化を求める声の高まりを受けて、ステークホルダーから排出削減への取り組みを求められる企業も増えている。
 脱炭素に関する日系企業のインドネシアでの貢献については、ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)が26日に公表した最新の調査結果で、日系企業266社が各地で合計638件のプロジェクトに取り組んでいることが示された。また、24年時点での日系企業のインドネシアでの脱炭素化への貢献量は、二酸化炭素換算で4600万㌧/年、60年には3億5000万㌧に達するとJJCは試算している。
 近年、インドネシアにおいて、中国、韓国等の大規模投資が注目を浴びる中、日本が強みを有するエネルギー・脱炭素分野で幅広い貢献をアピールすることは重要だが、筆者が知る限り、脱炭素分野でのインドネシアにおける特定の国の企業による取り組みを網羅的・定量的に取りまとめた調査結果は他に存在せず、この調査結果が日本のプレゼンス向上に貢献するものとなることを期待している。
 一方で、企業によるインドネシアでの脱炭素化の取り組みについては依然として制約が大きく、日本政府あるいは政府関係機関のサポートも引き続き重要である。このため、日本貿易振興機構(ジェトロ)及び在インドネシア日本大使館、JJC及び東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)等は、日本政府及び政府機関が提供する企業向け支援策のリストを作成・公表するとともに、関係機関が連携し、進出日系企業が活用しやすい相談体制を構築している。
 脱炭素化の流れはコストだけでなく、企業にとってのビジネスチャンスにもつながり得る。インドネシア企業においても脱炭素化の取り組みが始まる中、再生可能エネルギー、エネルギー効率の高い機器、デジタル技術等に強みを有する企業にとっては、インドネシアは可能性のある市場である。このような技術を持つ日系企業を応援するため、ジェトロジャカルタ事務所は、インドネシアで展開する日系企業の脱炭素技術を広く紹介する「ビジネスカタログ」を発行している。このカタログでは、現在78件の製品サービスを紹介しており、日本語・インドネシア語・英語の3言語で希望者に無料で提供、日本の優れた技術のインドネシアでの普及に寄与している。
 エネルギー・脱炭素分野は、持続可能な経済発展のみならず、インドネシアと日本の関係強化にとっても重要な役割を占めることが期待されている。日系企業、政府・政府関係機関によるオールジャパン態勢での活動がますます重要となっていくだろう。
 松田明恭 ジェトロジャカルタ事務所次長(JJCカーボンニュートラルタスクフォース事務局)

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