歴史振り返り、恩恵に感謝 南ジャカルタ インドネシア森林博物館

 コンクリートジャングルなどと呼べるほど高層ビルがそびえる街並みに圧倒されるジャカルタ都心部。インドネシアは陸空海に多様な生物が生育し豊富な資源に恵まれている国だとはわかっていても、便利さとテクノロジーに慣れた現代の日常生活では自然のありがたみはいつしか忘れ、感謝もつい二の次になってしまいがちです。今回のおすすめ観光情報はそんな私たちの今の暮らしの原点をはっと気付かせてくれる、インドネシア森林博物館を紹介します。

 日本人も多く住む南ジャカルタ、ショッピングモールやブンカルノ競技場にも近いスナヤンエリア。このあまりにも身近なところにインドネシア森林博物館は所在しています。
 設立は1983年、40年以上の歴史を誇りインドネシア環境・林業省の博物館として開放されており入館は無料です。
 それだけ古い博物館であれば今流行りの感じではないだろうし、屋内の森林博物館なら造花や模型の樹木で埋め尽くされた森の再現みたいなところなのかな、と訪問前は想像していたのですがまったく違いました。
 内部の広々としたスペースには手入れの行き届いた様々な展示物が整然と並び、木製のベンチなどはピカピカに磨かれています。
 博物館は2階構造、1階がメインの展示フロアで2階が図書館です。1階から2階へは中央部分が吹き抜けになっていてこの博物館のシンボル、インドネシア製の高級家具の木材としても知られるカユ・ジャティ(チーク)がそびえています。その周りをぐるりと囲むのは森林に棲むスマトラトラなどの動物たちの剥製、さらにそれらを取り囲むようにぐるっと回遊する形で展示物を観る流れです。
 展示の順番もとても解りやすくなっています。ジャングルの中に潜み兵士が戦っていた時代、過酷な環境下での森林伐採など人間の歴史と同時に、樹木の種類、材木の説明、インドネシアにおける木と文化の繋がり、環境問題、森の木が身の回りの物になるまでの工程、種や木の病気などがスムーズに同時進行的に見られるように工夫されています。
 また、説明もインドネシア語と英語が併記していてどれも解りやすいほか、ほぼすべての展示物にQRコードがついていてスマートフォンで読み取るとより詳しい説明が読めるようになっています。どれもが興味深いのでじっくりひとつひとつ説明を読んで周るとそれなりの時間は必要です。
 入口正面に構える樹齢300年という木の年輪の展示は年輪に年号がリンクされていてこの頃のインドネシアは……という具合に歴史年表を追うことができます。人間より遥かに長い寿命を持つ大木は物は言わずとも歴史の生き証人、こんなこともあんなことも静かに森の中で見ていたんだね……と、改めて感慨深くなりました。
 図書館も見応えがあります。重厚で立派な木製の図書カード箱、閲覧用机などには懐かしさが漂い、さすが森林・環境省というところ。蔵書は最近の発刊物、巨大地図から思わず目を疑い素手で触れる事を躊躇してしまった年代物の貴重な資料まで、インドネシアの森林に関することがすべて学べそうです。
 エコ、SDGsなどがより一層注目される現代、森林の木が生活用品に生まれ変わり私たちの手に届くまでに、そもそも私たちの今の生活が成り立っているために、どれだけの長い歴史、犠牲、過程、労力、進歩があったのか。
 インドネシア森林博物館はそんな事を今一度振り返りその恩恵に感謝する気持ちが自然に湧いてくる博物館と言えるでしょう。皆さまもぜひ足を運んでみて下さい。(水柿その子、写真も)
◇  ◇
 本稿への問い合わせは(メールsonokomizugaki@gmail.com)まで。

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