ジェネレーション・ギャップ

 大統領選の投票日まで残すところあと1カ月を切った。今年は世界各国で大型選挙が相次ぐが、インドネシアの大統領選挙は世界最大の直接選挙として注目を集める。また有権者に占める若者世代の比率が高いことも注目に値しよう。今回の選挙は、全有権者のうち、いわゆるZ世代(17〜27歳)とミレニアル世代(28〜42歳)の合計が初めて半数を超え、56%を占める。
 昨年11月以降の選挙戦でも各候補者がソーシャルメディアでのパフォーマンス発信を活発化させているが、先進国の選挙キャンペーンと比べると明らかに若者向けテイストのコンテンツが多いと感じる。支持率でトップを走るプラボウォ・ギブランのペアは、Z世代とミレニアル世代からの高い支持率を得ており(逆に55歳以上の支持率を見るとガンジャル・マフッド陣営が勝っている結果が多い)、この2つの世代の支持率の差がほぼそのまま全体の支持率の差につながっている構図だ。
 一般的にZ世代は、個人主義的で移り気、社会課題に関心が強いが一方で組織への帰属意識が低い、などと評される。ミレニアル世代もその前の世代から見ると似たような特徴で語られることが多い。
 インドネシアで仕事をしていると、ジェネレーション・ギャップ、特にZ世代の部下のマネジメントに苦労している話をよく耳にする。いわゆるジェネレーション・ギャップは現在ではほぼ全世界的に認識されている現象だし、かつ若者世代に違和感を感じる傾向は古くから繰り返されてきた(ジェネレーション・ギャップが社会学的に認識され始めたのは1960年代と言われるが、ヨーロッパでは18世紀にも若い世代に批判的な論調が出始めていた)。従ってインドネシアが特別という訳ではないだろうが、急速な経済発展と生活スタイルやテクノロジーの変化を伴っている分、成熟した先進国よりも世代間の意識のギャップに戸惑うケースは多いのかもしれない。
 ダイバーシティとインクルージョンに対する意識が高まるなかで、年齢の多様性(エイジ・ダイバーシティ)に対する認識も高まりを見せている。世代間の違いを積極的に認めて組織運営に活かしていくことが、組織パフォーマンスにもポジティブな影響を及ぼすとの考え方が根底にある。それには世代間の違いを認識しつつもステレオタイプ的な見方から脱して個のレベルの関係性構築が必要となってくる。
 以前、リバース・メンタリング(自分よりも若い世代にメンターになってもらう制度)を経験したことがあるが、最初はお互い何を話すのが良いのか戸惑うことも多かったが、次第にお互いのパーソナリティや共通の興味を知るうちに、自分にとっては思いもよらない視点や気づきがあった(例えば、組織内でのメッセージ発信やその浸透を考える上でどんなアプローチがベストか等)。
 インドネシアの人口ピラミッドを見ると40歳代前半より若い世代の大きな膨らみが顕著であることを実感できる。人口ボーナスの恩恵を追い風にしようとするのであれば、若い世代に選ばれる組織づくりを意識することが必須なのではないかと感じる。(三菱UFJ銀行ジャカルタ支店長 中島和重)

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