日本型教育の可能性

 インドネシアの義務教育は日本と同様、小学校が6年、中学校が3年の9年間となっている。インドネシア全土で約15万校の小学校に2900万人の児童生徒、約4万校の中学校に1400万人の子供たちが通っている。就学率は年々増加しており、2021年時点で小学校99・4%、中学校93・2%に達している。
 政府は国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」を達成するため、2030年までに高品質な教育を提供する事を目指している。さらに「Indonesia Emas 2045」という長期ビジョンの中で、高品質な教育を通じて教育格差を解消し、社会的公正を促進し、持続可能な発展を達成する事を掲げている。
 政府はまた、教育カリキュラムの一環として、過去の暗記中心から「発想力や想像力」を育むカリキュラムへの移行を推進して来ている。
 世界の教育の潮流を見ても、経済協力開発機構(OECD)は将来求められる能力として非認知能力・社会情動的スキルを強調している(OECD Education 2030)。
 非認知能力とは「思考、感情、および行動パターン」を指し、価値を生み出すために生涯を通じて高める事ができる能力と定義される。その中でも特に社会経済的な成功に関わり、測定可能で成長可能なスキルを「社会情動的スキル」と規定し、目的の達成や他者との協働、情動の制御の3つのカテゴリーで捉えている。
 こうした「非認知能力」に関連して、日本型教育が注目されており、音楽を通じた教育がその会得に好ましい影響を与える可能性の研究が進んできている。
 この背景の中で、ヤマハは各国の課題に対応したパッケージ型解決策を提案し、公教育(公立学校)を中心に音楽を通した教育の導入支援を行っている。
 ここインドネシアでは音楽教育を受けた事がない教員が大多数なため、教育省と協力して、教員に音楽の授業方法を伝えるセミナーを開催してきている。地域格差のない展開を行うためビデオセミナーを活用し、昨年度は全国の約6000人、今年度はこれまでに約5000人の教員へのセミナーを実施し、小学校での音楽授業の導入が着実に進んでいる。
 この活動は世界7カ国で展開され、これまでに約300万人の子供たちにこのプログラムを通じて音楽の授業が届けられている。
 学校教育に関連した事業は、授業コンテンツや施設、IT機器を始め多岐にわたり、これは多くの日本企業に事業機会を提供すると同時に、インドネシアの更なる経済発展の基礎となる教育分野への支援活躍が望まれている。
 井沢修 Yamaha Musik Indonesia Distributor(JJC生活用品グループ代表)

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