聖典印刷で汚職発覚 ゴルカル党員の関与追及 政権の新たな火種にも
イスラムの聖典コーランの印刷事業を巡る汚職事件が発覚し、波紋が広がっている。独立捜査機関・汚職撲滅委員会(KPK)は、ゴルカル党の国会議員が事件の中心人物の一人とみて容疑者に断定し、同党の支持母体や宗教省高官の関与を追及している。現政権は、ユドヨノ大統領の母体である民主党幹部の汚職事件で支持率が低下しているが、連立与党にありながら、政権攻撃も辞さないゴルカル党などの議員の不正追及は、足並みのそろわない政権の新たな火種になる可能性がある。
事件の中心人物の一人とされているのは、ゴルカル党のズルカルナエン・ジャバル容疑者。2009―11年、宗教省ムスリム指導総局が実施した低所得者層対象のコーラン支給プログラムで、国会第8委員会(社会福祉・宗教担当)の予算担当者として宗教省高官と結託。事業予算を水増し請求し、正規価格との差額分を着服した疑いが持たれている。
KPKは、ゴルカル党の支持母体、ゴトン・ロヨン家族会議(MKGR)の青年団幹部で、ズルカルナエン容疑者の息子やその友人も関与したと指摘。
宗教省のナサルディン・ウマール副大臣が、ムスリム指導総局長を務めていた当時、ズルカルナエン容疑者や息子が運営する印刷会社と癒着し、コーラン印刷事業の受注に便宜を図ったとみられる。
事件には同容疑者だけでなく、国会第8委の他委員にもコーランが配られるなどしたほか、スルヤダルマ・アリ宗教相(開発統一党党首)の側近らの関与も取りざたされている。
同事業は、低所得者層やプサントレン(イスラム寄宿学校)の生徒を対象にしたコーラン支給プログラム。全国各地の宗教局を通じ、無償でコーランを配布し、イスラムに関する知識を高める目的で実施された。
同プログラム用のコーランは、主に宗教省が運営するコーラン印刷会社(西ジャワ州ボゴール)で印刷してきたが、毎年必要な200万部を満たせず、民間企業に一部を委託。09年以降は、ナザルディン容疑者と息子が経営する企業が受注していたとみられる。
宗教省は汚職の巣窟とされる省庁の一つ。2005年、毎年約20万人が参加する宗教省主催のメッカ巡礼ツアーで、同省が運営管理する参加費残金(約45億ルピア)の不正流用が発覚。当時のメガワティ政権のアル・ムナワール宗教相に汚職罪で禁固7年が下ったことがある。