飛躍の年にしたい 脅威は中韓勢 栗田敦MMKSI社長
今年4月、三菱自動車販売現法の三菱モータース・クラマ・ユダ・セールス・インドネシア(MMKSI)の新社長に栗田敦氏が就任した。三菱ふそうトラック・バスの販売代理店クラマ・ユダ・ティガ・ベルリアン・モータース(KTB)での7年間の駐在を経て、3年ぶりのインドネシア赴任となった。「慎重に周りをみながらも、新型車の投入などを通じて飛躍の年にしたい」と栗田氏は語る。
赴任までの3年間、三菱自動車のASEANにおける販売事業を日本からみる中で、インドネシアの特徴を再認識したという。強みはディーラーのネットワーク。「みんな非常にハングリーで困った時に助け合える強い信頼関係がある」。そして三菱自動車の弱みは、車種が少ないことと、乗用車販売事業に本格参入して歴史が浅いことだという。
三菱自動車はインドネシアで1997年にMPV(多目的車)「クダ」の現地生産・販売を「国民車に」との意気込みだったがうまく行かず、撤退を余儀なくされた。2009年にはKTBからパジェロスポーツを投入で再起を図ったが、「存在感を示すまでには至らなかった」。
自らKTBに赴任すると「工場を建てて現地生産をしたい」と本社に要望。三菱自動車にも必要性を理解してもらい、17年に念願の新工場が操業を開始し、インドネシアに特化した小型MPVエクスパンダーの現地生産・販売が始まった。ただ、「現時点では車種も少なく、他社と互角に競い合えるようになるには時間がかかる。謙虚な気持ちを忘れず、お客さまニーズに応えていきたい」。そして今年予定している新型の小型SUV(スポーツ多目的車)投入で、さらにシェアを伸ばすことを目標としている。
「金利の上昇、資源価格の下落など先行きが若干不透明だが、積極的かつ慎重に取り組み飛躍の年にしたい」。来年には小型商用EV(電気自動車)ミニキャブ・ミーブの販売を予定している。
栗田氏が今、もっとも気になるのはEVと中韓勢の動きだという。EV事業について、栗田氏は「時代が変わるタイミングは見逃してはいけない使命感がある」。3年前までいたKTBでは影響は限定的と見ていた中韓勢だが、「今や脅威だ」と正直に語る。
「(中韓勢の)スピードがすごい。我々も対応を急ぐ必要があるが、品質と信頼は大切。やっぱりユーザーは裏切れない」。栗田氏は「強み」と胸を張るディーラーとエクスパンダー以来の新型小型SUVの投入を両輪とし、三菱自動車の存在感を見せるもくろみだ。(坂田恵愛、写真も)
◇くりた・あつし 1969年生まれ。静岡県出身。94年に三菱商事入社。2013~17年はKTBの取締役(経営戦略担当)を務め、17年から同社社長に就任。三菱商事自動車事業本部自動車東南アジア諸国連合(ASEAN)部長を経て23年4月から現職。