バリの棚田 世界遺産に 神、自然、人間の調和を評価 ユネスコが文化遺産登録

 ロシア・サンクトペテルブルクで6日まで開催中の国連教育科学文化機関(ユネスコ)の第36回世界遺産委員会は先月29日、インドネシア政府が推薦していた、バリの水利システム「スバック」に基づいた文化的景観を文化遺産として承認し、世界遺産リストに登録した。世界的観光地として知られるバリで初となる世界遺産。独自の発展を遂げたバリ・ヒンドゥーに根ざした芸能文化やビーチ以外の観光資源として、観光客のバリへの興味を一層高める役割を果たしそうだ。

 登録されたのはバンリ県バトゥール湖、18世紀に建立されたバドゥン県のタマン・アユン寺院などを含む五つの棚田地域で、合計約1万9500ヘクタールにおよぶ。9世紀から千年以上にわたって棚田を支えてきた、神、自然、人間の密接なつながりを説くバリ・ヒンドゥーの哲学「トリヒタカラナ」を体現した「スバック」が評価され、ユネスコに世界文化遺産として認定された。
 バリ州タバナン県にあるスバック博物館のクトゥット・ルミニアシさんによると、スバックは水利システムのほか、農民の活動を取り仕切る組織の呼び名でもある。「トリヒタカラナ」は、バリ語で「幸福な生活に必要な三つの要素」という意味を持ち、パラヒャンガン(人間と神の調和)、パウォンガン(人間同士の調和)、パルマハン(人間と自然の調和)で構成される。スバックの人々は「トリヒタカラナ」を守り、現在も、水路が通過する寺院で清められた水を分け合い、儀式を通じて神への感謝を伝え、化学肥料や農薬などを使わない稲作を続けている。
 40年以上にわたってバリ観光に携わってきた旅行会社「ラマ・ツアーズ」社の万亀子イスカンダール社長は、文化遺産認定について「非常に良いこと」と評した。一方で「観光開発が気にかかる」と指摘。ホテル建設などで美しい景観が損なわれないよう、州に法整備を求めたいと語った。
 ユネスコの世界遺産は、各国政府の担当機関の推薦を受けた候補を国際記念物遺跡会議か国際自然保護連合が調査をした後、世界遺産委員会で審議にかけて認められる。今回は、インドネシア政府が登録準備を開始した2000年から、12年の月日を要した。
 インドネシアの世界遺産は、今回で8カ所目。これまで、中部ジャワのボロブドゥール寺院遺跡群(1991年文化遺産認定)、プランバナン寺院遺跡群(91年文化遺産認定)、西ジャワ州ウジュン・クロン国立公園(91年自然遺産認定)、コモド国立公園(91年自然遺産認定)、中部ジャワのサンギラン初期人類遺跡(96年文化遺産認定)、パプア州のロレンツ国立公園(99年自然遺産認定)、スマトラの熱帯雨林(2004年自然遺産認定)の7カ所が登録されている。

◇世界遺産における文化的景観の位置付け

 ユネスコは1992年、「世界遺産条約履行のための作業指針」に文化的景観という概念を盛り込み、人と自然の有機的な関わり合いによって形成された景観を、新たに関心を払うべき文化遺産として重視するようになった。
 日本では「紀伊山地の霊場と参詣道」「石見銀山遺跡とその文化的景観」などが文化的景観を含む世界遺産となっており、昨年には岩手県の平泉が、「平泉―浄土思想に関連する文化的景観」として、世界遺産リストに登録された。

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