医学の歩みと立ち上がる学生 中央ジャカルタ・スネン 民族覚醒博物館

 日々の生活の中、また、近年は新型コロナウイルスの世界的感染拡大という未曽有を乗り越え、私たちは医学の進歩と医療従事者の方々に支えられているありがたみを実感し感謝するばかりです。今回のおすすめ観光情報はインドネシアの医学教育のあゆみとインドネシア国民として目覚めた有志団体の歴史について学ぶことができる博物館、「民族覚醒博物館」を紹介します。

 「民族覚醒博物館(ミュージアム・ケバンキタン・ナショナル)」はオランダ統治時代の建物や雰囲気が残る中央ジャカルタのスネン地区に所在しています。少々わかり辛い場所ですが、白い要塞のような外壁に風格あるアーチ状の入り口が目印です。がっしりとした、いかにも歴史的風貌のネオ・ルネッサンス様式の建物が「ロ」の字型に敷地を囲む敷地内に入ると、目の前には色とりどりの草花で美しく整えられた別世界の中庭が広がっています。この建物が完成した1900年代初頭、現在のような高層ビルも巨大ショッピングモールも無かったジャカルタ。1839年完成のジャカルタ最古の教会のひとつイマヌエルプロテスタント教会や1901年に完成したネオ・ゴシック様式のカテドラル(大聖堂)と共に威厳ある姿で建っていた景色が目に浮かぶようです。
 博物館の展示は2大テーマが柱になっています。ひとつはインドネシアの純民族のための医科大学(STOVIA)、もうひとつはインドネシアの民族主義運動の先駆けとなった団体、ブディ・ウトモの歴史です。展示室には当時の教室や宿舎部屋などがそのまま利用されており、入り口から一周して中庭の集会場や講堂も見学する順路になっています。入口横の第一の扉内はスクリーンと座席が設置されたシアターになっていてSTOVIAとブディ・ウトモの概要紹介映像の鑑賞ができます。
 STOVIAは、1851年に設立されたジャワ医科学校が基盤となり、1902年にオランダの倫理政策の下に開校し、現在のインドネシア大学医学部の前身となった学校なのだそうです。風土病や感染症の流行がたびたび襲った当時のインドネシアにおいて、オランダ人医師を本国から招へいするばかりではなく、インドネシア人医師を養成するための教育が重要視されていた時代。展示は授業風景の等身大ジオラマ、ピンセットや試験管など小さな医療器具からレントゲン台など非常に珍しい手術用の機械など様々で、多くの人体に実際に使用されていた本物の医療器具だと思うとひときわ現実味があります。また、女性医師の紹介では日本軍政下での医療従事経験についての解説もあります。
 ジャワ語で「至高の徳」を意味するブディ・ウトモは、政治や争いではなく教育によってジャワ人の地位向上を目的にSTOVIAに在籍していた学生が立ち上げた団体です。1908年に発足し、ジャワ人の目覚め(覚醒)の発端となり、インドネシアのナショナリズムに繋がる道を開拓した功績で、展示室には設立当初の有志の銅像や写真が堂々と展示されています。
 中央ジャカルタの一角、医療、教育、文化を軸に民族の覚醒と誇りを伝える博物館。雑踏を隔てる中庭の居心地の良さは青空や花々の美しさだけではなく、アカデミックで文化的な雰囲気が今なお残っているからかもしれません。ぜひ皆さまも訪れてみてはいかがでしょうか。
(日本旅行インドネシア 水柿その子 写真も)

◇PT. JABATO INTERNATIONAL
電話 021・520・2091
メール sonoko_mizugaki@jabatojkt.com

おすすめ観光情報 の最新記事

関連記事

本日の紙面

JJC

人気連載

天皇皇后両陛下インドネシアご訪問NEW

ぶらり  インドネシアNEW

有料版PDFNEW

「探訪」

トップ インタビュー

モナスにそよぐ風

今日は心の日曜日

インドネシア人記者の目

HALO-HALOフィリピン

別刷り特集

忘れ得ぬ人々

スナン・スナン

お知らせ

JJC理事会

修郎先生の事件簿

これで納得税務相談

不思議インドネシア

おすすめ観光情報

為替経済Weekly