読書文化根付いて 業界団体がブックフェア 出版、1年で4、5人に1冊の割合
先進国や周辺他国と比べても、本を読む習慣が一般的でないインドネシアで、業界団体が本の普及を目指し、地道な努力を続けている。インドネシア出版社協会(IKAPI)ジャカルタ支部は7月1日まで、中央ジャカルタのイストラスナヤンで書籍の展示即売会「ジャカルタ・ブックフェア2012」を開催。スマートフォンやタブレット型端末の普及により、ウェブを通じた情報収集や電子書籍の需要も高まっており、既存の出版社は苦しい立場に追い込まれる中、業界の浮揚の足がかりになればと願っている。
332社が210のブースを出展した会場には、趣味や小説、実用書、宗教、漫画などありとあらゆる本が中古、新品問わず所狭しと積まれ、来場者の目を楽しませている。
原色を使った派手な表紙の児童・子ども向けの本がまず目を引く。絵本から宗教教育の本までジャンルは様々だが、半数近くは児童・子ども向け。中古のものは3千ルピアから販売されている。
どこか懐かしいインクのにおいがただよう古本屋も。「ダウド・コレクションズ」では、オランダ植民地時代の政府記録を7500万ルピア(約64万円)で販売。
出版社「ミザン」のハイルルさん(24)によると、子ども向けの本のほかに、料理本やインテリアなどの趣味や、政治、英語の参考書が売れ筋のようだ。
■税優遇が不可欠
同フェアの運営に関わるIKAPIジャカルタ支部のヒクマット・クルニア副会長によると、高成長を続けるインドネシア経済と比較し、出版界の成長は緩やかに推移している。
インドネシアの本の普及率は他国と比べても元々低く、国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)が定める1年に国民1人に行き渡る本の数(1年に生産される本の数を人口で割る)は4、5人に1冊。世界平均は1人7冊で、隣国マレーシアの1人2冊と比べても大きな差があるという。
本が普及しない一因として、ヒクマット副会長は税制の問題を挙げる。他国は本の生産過程や販売時に税の優遇がある。インドネシアはほとんどないため、原料から印税の段階まで全工程に税金がかかり、本の高価格化を招くという。
また生産された本の40%がジャカルタで販売されており、地方へ本が行き渡らないことも深刻な問題だ。ヒクマット副会長は「本を買いたくても買えない層が多い。政府は税制面などで本の普及を後押しすべきだ」と話す。
インドネシアの本市場で最も販売比率が高い年齢層は12―18歳で、売上全体の20%。12歳未満も合わせると32%にもなる。この層は市場の伸びも大きく、今後も人口が増える見込みだ。現在のそれ以上の年齢層は、スハルト政権の言論統制下で育ち、活字を読む機会はほとんど教科書だったため、読書の習慣があまりないとして、出版業界は、多くの本がある中で育つようになった若年層に期待を寄せる。
今回開催されているブックフェアでは、ほとんどの本が20%以上の割引率で手に入れることができる。ヒクマット副会長は「よりたくさんの人が本を買う機会になってほしい」と願いを込めた。