人材育成への取り組み
日系企業はインドネシアで長年にわたり、人材育成の面で大きな貢献をしてきた。例えば、インフラ建設などにあたっては、日本から労働者を連れてくることはせず、地元の方々を雇用してさまざまなプロジェクトを仕上げてきた。こうしたアプローチは、インドネシア企業の成長とその技術者の人材育成に貢献し、こうした人材がこの国の経済・社会発展に貢献してきたといえる。
製造業の分野でも、工業団地を開発し、多くのインドネシアの方々を採用するなど就職機会を提供するのみならず、地元の方々とともに周辺の教育環境の整備を進めて「5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)」の考え方の定着を図るなど、投資金額だけでは測れない貢献をしてきた。
また、アンケート調査結果によると、日系企業はインドネシアの方々の登用に非常に積極的である。インターンを受け入れ、インターン終了後に優秀な人材を採用するなど人材育成と就業機会を提供。そして44%の日系企業で80%以上の管理職ポストがインドネシアの方々で占められていることが明らかになった。これは一朝一夕に達成できるものではなく、インドネシアに進出する日系企業の長期的な人材育成の努力の証とも言える。
ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)人材育成検討コミッティーでは、求職者向けの実習制度を普及するための企業向けマニュアルを労働省やインドネシア経営者協会(アピンド)と協力して作成し、その普及活動に取り組んできた。この普及対象は日系企業のみならず、インドネシア企業も対象としており、インドネシア政府からも高く評価されている。
多くの日系企業では、優秀な人材を採用する手段、採用チャンネルの多様化の手段として、この実習制度を活用している。さらに、多くのインドネシアの求職者がこの実習制度を利用して日系企業に就職しており、企業、求職者、社会の三者が「Win—Win—Win」の関係を築いている。
今後は、求職者向けの実習制度普及に加えて、インドネシアの資格認証制度の普及等の取り組み等を行っていきたい。これは、資格認証制度が企業において優秀な人材への待遇を改善し、個人が成長していくためのインセンティブを提供する際の「ものさし」として活用することが期待されるためである。日系企業においては、この資格認証制度を活用した事例が存在しており、人材育成検討コミッティーでは、インドネシア商工会議所(KADIN)とも協力して、資格認証制度の一層の普及のため、良好事例を集めた事例集を作成していくこととしている。
JJC人材育成検討コミッティーは当地日系企業のみならず、インドネシア政府・インドネシア産業界も巻き込んだ人材育成の取り組みをこれからも積極的に進めていきたい。
髙橋正和 日本貿易振興機構(ジェトロ)ジャカルタ事務所長(JJC人材育成検討コミッティー委員長)