立教大研究員の高藤さん ソプラノ歌手の郷古さん 世界に羽ばたく先輩招き JJS中学部が進路学習
ジャカルタ日本人学校(JJS)中学部は19日、バンテン州南タンゲラン市ビンタロの同校体育館で進路学習の一環として、2004年のスマトラ沖地震・津波で被害を受けた地域で口承文芸による防災について研究する立教大学アジア地域研究所研究員の高藤洋子さんと、スイスのジュネーブで活躍し、インドネシアでは邦人コーラスグループの指導も行っていたソプラノ歌手の郷古麻記子さんを講師として招き、中学部全学年の生徒約200人が参加する講演会を開いた。
■防災意識の伝承訴える
高藤さんは貿易会社に勤めていた父の赴任先であるインドネシアに3歳のころから住み始め、1970年代に中学部2年までJJSに通った現在の生徒たちの先輩だ。幼少期に住んでいたときに自然と身に付けていたインドネシア語を使って現地に入り込み、津波で甚大な被害を受けた周辺地域に比べ極端に犠牲者が少なかったアチェ州シムル島などでの研究を続けている。
同島では、津波が来たらすぐに逃げなければいけないことを説く島独特の四行詩の存在が、被害を最小限に抑える一因になったことを突き止めた。ハード面だけでなく、文化や行動方法などソフト面での防災対策が重要である点は、東日本大震災で「津波てんでんこ」の言い伝えを基に生徒が教師の指示を待たずに逃げて、登校していた生徒全員が助かった岩手県釜石市での出来事などと重なり、高藤さんの研究は注目を浴びている。
「いかに日常に防災意識を組み込んでいくかが重要」と訴える高藤さん。生徒代表で感想を述べた中学部3年の鈴木康介さんは「戦争もそうだが、記憶は忘れられていくもの。(震災の記憶などを)僕たちがしっかりと後世へ伝えていかなければいけないと思った」と語った。
■大きな歌声のコツ指導
郷古さんは茂木千枝子さんのピアノ演奏に合わせ、オペラ「ロミオとジュリエット」の「ジュリエットのアリア」など3曲を披露。高音の歌声のきれいな響きに、生徒たちは驚嘆のため息をもらした。
途中、「私と一緒に大きな声を出してみたい人はいますか」と呼び掛けると、「歌声を聞いた瞬間にすごく感動した」という中学部3年の松野沙織さんが元気に手を挙げ、駆け足でステージに上がった。きれいな歌声を披露した松野さんに、郷古さんが横隔膜が動くように呼吸して体全体から歌声を出すよう手取り足取りアドバイス。松野さんが再度歌うと、1回目よりも会場に響く大きな声となった。
「何事にも全速力で恥ずかしからず、努力を続けてほしい」と呼び掛けた郷古さん。
会場には21日の本帰国を控えてジャカルタで最後の歌声の披露となったため、指導していたコール・ムティアラのメンバーも観覧に駆け付けた。