【デジタル羅針盤】 ネットあってのカメラへ
先日、インドネシアのデジカメのディストリビューターの方とお会いしたのだが、最近は台数ベースで一眼レフカメラがコンパクトカメラを凌駕する勢いだそうだ。
確かに一眼レフを持った若者の姿はよく見かける。これだけ価格が下がれば、当然であろう。筆者が学生のときにこのぐらいの価格水準だったら、使いこなせるかどうかは別に買っていたに違いない。
一方、コンパクトタイプは販売が伸びていないという。これは携帯電話のカメラとの性能差が縮まったことが原因というが、筆者は撮影機能よりも写真の楽しみ方の変化に原因があると考える。
この10年で写真の楽しみ方は大きく変わった。デジカメ以前は現像しアルバムに保管し、時たま引っ張りだして思い出に浸るためのものだった。
その後、カメラがデジタル化し、自宅のパソコンから写真をブログなどに掲載して、遠くに住む家族や友人、または不特定多数の他人にも見てもらえるようになった。
ここまでは携帯のカメラより撮影機能の良いコンパクトカメラに優位性があった。だが、ここ数年は撮影機能よりもネットとの接続が重要になったのだ。
例えば友だちと話題のレストランに出かける。出てきた料理を携帯で写真に撮って、すぐにフェイスブックにアップロードする。料理を食べている間にも次々に写真を見た人からコメントが寄せられる。近くに居合わせた別の友だちが合流することもある。
写真を撮るのはネットにアップロードしてコミュニケーションをするのが目的になっている。ネットに繋げないデジカメは失格だ。撮影能力が劣っていても携帯電話のカメラの方が良いということになる。
さらにスマートフォンならカメラの撮影機能の低さを補うアプリがたくさんあり、タップ一つで写真を補正してくれる。コンパクトカメラで撮るより、こうしたアプリで補正した方が上手い写真に見えることも多い。
カメラ付き携帯が出回り始めたころ「カメラ付き携帯が人気なら、電話付きカメラを作れば売れるのでは」なんていう冗談があったが、実際に日本のメーカーからもWiFiでネットに接続できるデジカメが売り出されている。
写真の共有サービスも次々に登場しており、写真とネットの融合はますます深化し、カメラもそれに合わせて開発されていくことになるだろう。(元じゃかるた新聞記者、福田健太郎)