警備業界の現状と潮流
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で、当地における警備の方法も変化が見られたが、どの様に警備の方法が変化したのか、問題は何か、将来はどうか。足元の状況と課題を報告したい。
まず、過去を少し振り返ると、スハルト政権時の比較的安定していた治安が、1998年のジャカルタ暴動から警備意識が高まり、2000年代初頭の大規模爆弾テロを受けて金属探知機や爆弾探知機が配備されるようになった。そして新型コロナ対策での体温検査や入退館確認と変化。特に人との距離を保ち、接触を控える顔認証装置、非接触型の検査装置が見られるようになった。
一方で、コロナ禍で経営環境が停滞した結果、大規模な投資を手控える厳しい面も見られ、人件費が年々上昇する状況下でも、人件費が比較的に安価と言われる警備員の配置に頼る選択肢も見られた。
また、中国やウクライナなどの刻々と変化する世界情勢や、半導体をはじめとする部品不足による警備機器部品の供給不足も少なからず、影響した。ただし、今後の新しいリスクに向けて、リスク管理の必要性や考え方など、ウィズコロナの中、今後のあるべき会社運営・警備の方法が見えたのではないか。
最近、当地でも火災報道をよく耳にするが、防災設備を設置していなかった、設備が反応しなかったとの話も聞く。また、日本と同様に自然災害も各地で発生している。
事前の予知・予報技術は発達しているが、100%予報することは不可能であり、万一に訪れるであろう、リスク・災害に向けて、各種備蓄品の見直し・電気設備の見直し、非常階段や火災警報器の位置を見直してほしい。
また、インドネシアにおけるその他のリスクとして、日本以上にSNSやスマートフォンが活用される中、情報漏洩のリスクも注意が必要だ。在宅勤務によるシステム承認手続きや送金手続きが一般化する中、サイバー攻撃や攻撃型メールでのウイルス攻撃など、絶えずセキュリティ対策・リスク管理対策が必要であり、これらを意識する会社組織(人)造りが必要ある。
日本には、警察官が全国に約26万人配置されるのに対し、59万人の警備員が存在するといわれる。インドネシアの警察官は約58万人であり、それ以上の警備員が存在する。ただし、当地では警備員教育を受講していない警備員や、警備の目的を理解しない警備員が多い事も残念ながら事実である。
今後も警備ロボットやドローン、また位置情報管理技術のほか、IT、AI、IOTの活用で警備の手法も変化していくが、人の五感も大切なシステムであり、人と機械の融合が更なる警備力の向上に繋がる。
また、2024年以降の首都移転によるスマートシティ化や技術進化の流れの中で、警備業界でもカーボンニュートラルの取組みが必要になる。警備機器、電動車両、AIの活用など新技術を取り入れ、業界全体で当地の治安向上に貢献し、安心・安全の確立に一躍を担っていきたい。ALSOK BASSインドネシア社長 岩井拓史(JJCサービスグループ代表理事)