過去に学び、未来へつなげる ペンベラ・タナ・アイル博物館 ボゴール
インドネシア語で故郷のことを「タナ・アイル」と言います。「タナ(Tanah)」は「土地」、「アイル(Air)」は「水」のことです。「トラジャ族の土地」という意味のコーヒーで有名な「タナ・トラジャ」、飲料水を「アイル・ミヌム」と呼ぶなどどちらも身近に耳にする単語ですね。資源に恵まれたインドネシアの肥沃な土地、そしてすべての命の源である水。この二つをあわせて「土地+水=故郷」となるインドネシア語に魂を揺すぶられるような美しさを感じます。今月のおすすめ観光情報は、西ジャワ州ボゴールにあるペンベラ・タナ・アイル博物館を紹介します。
市街中心のボゴール植物園北側からまっすぐ北のジャカルタ方面へ伸びるスディルマン通り。インドネシアの国家英雄、インドネシア独立戦争で最高司令官としてインドネシア軍を率いたスディルマン将軍の名が付けられた道路名です。首都ジャカルタの幹線道路にも同様の道路名が付けられているなど国家英雄として広く長く敬意が示されていることがわかります。
このスディルマン通りに面した広大な敷地内に位置するペンベラ・タナ・アイル博物館(Museum Pembela Tanah Air/Museum PETA)は日本語では「郷土防衛義勇軍博物館」と訳されます。建物はボゴール宮殿と同年、1745年に建築され、幾多の歴史的役割を経て1995年に博物館として開館しました。敷地は現在も軍用地となっており、訪問時には迷彩服を着用した兵士たちが公道の掃除をし、中庭には訓練をしている姿もありました。
入口右手にスディルマン最高司令官の像を見ながら重厚なアーチ状の門を入ると歴史的場面を伝えるレリーフ、左右に二手に分かれた展示室の入り口があります。そして、門を抜けた中庭には当時の軍服を身にまとい、「Daidancho Soedirman」と刻まれたスディルマン大団長像と義勇軍のモニュメントが建っています。
博物館内部、ふたつの展示室には細部まで丁寧に作られた14のジオラマ、義勇軍旗、新聞記事、軍服、武器などが整然と並び、インドネシア語と英語での説明書きも添えられています。
穏やかならぬニュースが流れ、国際情勢の不安が押し寄せてきているご時世。故郷を離れインドネシアで暮らす私たちにとっても改めて様々な思いが心をめぐるところです。
ペンベラ・タナ・アイル博物館には当地だからこそ肌で実感できる日本と重要な関係がある軍事資料が豊富に展示されています。戦争、平和、安全、未来……。歴史認識や思想は個人差があるものでしょう。ただ、ご縁があってやってきたインドネシアで、私たち現代の日本人もしっかりと関心を持ち、過去から学び、自分事として未来へつなげて行く……。そうしたことでインドネシアとの絆を深めることができるかもしれません。興味のある方は訪問されてみてはいかがでしょうか。(日本旅行インドネシア 水柿その子 写真も)
◇PT. JABATO INTERNATIONAL
電話 021・520・2091
メール sonoko_mizugaki@jabatojkt.com