ウィズコロナ時代の食品消費
年明け早々、緊急活動制限が再びレベル2に引き上げられた。新型コロナウイルスの感染拡大は、昨年の第4四半期に入ってようやく落ち着きを見せ始めたが、ここに変異株「オミクロン株」が冷や水をかけた。年末年始の休暇もあって感染者数は増え始めており、経済復興の兆しが見えていただけに残念である。
振り返れば、人口2億7千万人とも8千万人とも言われるインドネシアで、コロナ感染が始まったのは2020年初頭。以来、生きるためには「病気にならない」こと。同時に「食べる」ことが最も大事な関心事となった。そこでこの国における「食」に対する考え方、傾向がこのおよそ2年でどう変化したのかを見ていきたい。
爆発感染が起きた昨年7~8月は、ショッピングモールやレストランへの入場が困難となり、感染を恐れた市民はステイホームで嵐が過ぎ去るのを待った。その結果、これまで以上に体を動かさなくなったため、「健康的な食事を摂る」ことが見直されている。通勤に費やす時間がなくなり、自炊への関心が高まったことも特筆すべき点である。
一方、売り手側も変化した。感染拡大で営業制限や休業などの影響を受けたレストラン業界は、Eコマースを活用してデリバリーに力を注ぎ、窮状を耐え忍んできた。そして7月以降の感染爆発でこのプラットフォームが料理だけでなく、食材デリバリーにまで裾野を広げた。これは外食文化が浸透しているインドネシア市場においても、自炊の見直しが始まった証と考える。
さらに細かく見てみると、感染回避のため人との接触を避けようと食材の購買回数を減らす傾向が生まれた。この結果、生鮮食品よりも長期保存ができる冷凍食品に光が当たったことは、もうひとつの傾向と言える。
20年段階ですでに6億ドルの市場規模があると言われたインドネシアの冷凍食品市場は、21年で7億ドル(推定値)に成長。さらに25年までに14億ドルにまで伸びるという観測も出ている。それだけ自宅で食事をすることが増えているとも言えるが、冷凍食品の急伸は家電の普及と連動していることも考える必要がある。
インドネシアの国内総生産(GDP)の伸びとともに、20年時点で冷凍冷蔵庫の普及率は69%に達しているが、30年には90%を超えると予測されている。
一方、電子レンジの普及率はまだ1%にも満たず、冷凍食品も電子レンジで温めてすぐに食べるというスタイルより、油で揚げたり、湯せんをして食卓に供される段階にある。
しかしながら、コロナ禍で在宅勤務やリモート学習が推奨され、人々の暮らしは大きく変質した。仮にそれがコロナ前に戻り、あるいはそれに近いウィズコロナ時代になっても、近年の健康ブームなどが背景となり、コロナ禍で根付いた自炊の習慣は食の多様化を支えても、消滅はなかろう。共稼ぎ所帯の食卓で冷凍食品が活躍する日もそう遠くなさそうだ。(兼松インドネシア社長・JJC個人部会会長 北野正也)