コロナに代わるキーワード

 謹賀新年。季節感の無いインドネシアでの新年だが、年始号なので恒例の干支にまつわる話から。2022年は「壬寅(みずのえとら)」。壬(みずのえ)は、「妊に通じ、陽気を下にはらみ、植物の内部に種子が生まれた状態」を示す。寅と合わせることで、厳しい冬を乗り越え、春の胎動とともに芽吹き成長する礎となる、とされる。コロナ禍で落ちこんだ経済を立て直し、飛躍の礎とする一年となることを暗示している。
 新たな脅威であるオミクロン変異株は、欧米では感染拡大が続いているが、重症化率が抑えられていることもあり、金融市場での過度な警戒感は和らいできた。2年経って、ようやく「コロナ」というキーワードに対する市場の感応度が、徐々に落ちついてきた印象である。
 では、金融市場の次の注目キーワードは何か、今年は「インフレ」になると思っている。
 先日の本コラムでご紹介したように、米国では11月消費者物価指数(CPI)が前年同月比+6・8%と、先進国としては異例のインフレ高進となった。英国でも+4・9%と歴史的な水準での高止まりが続いている。理由として考えられるのは、大規模金融緩和と、サプライチェーンの混乱である。また、日本でも11月のCPIが+0・6%となった。実はこの数字は、政治主導で進んだ携帯電話料金の値下げ分を含んでおり、この特殊要因を除くと、実に+2%を超える水準となる。あれだけ苦労しながら日銀や政府が努力してきた物価上昇率の目標に、ついに達するところに来たことになる。携帯価格の特殊要因が一巡する今年3月には、その実力が露わになるが、長年デフレに喘いでいた日本でも、物価上昇は現実のものとなるのであろう。
 インフレは、よく「物価の上昇」と解されるが、裏を返せば「通貨の下落」でもある。つまりは、国力の低下とも考えられる。例えば、第一次世界大戦後のドイツでは、ハイパーインフレにより当時の通貨マルクが、半日で半分から3分の1に減価してしまう危機的状況にあった。労働者は給料を受け取ったらすぐにモノに交換し、資産防衛をしなければならなかった。最終的には、不動産を担保とした新通貨レンテンマルクを発行して収束するのだが、その後ドイツでは深刻な失業状況が続いた。いま、この状況に似ているのがトルコである。11月のCPIは+21%、キッチンペーパーが2カ月で倍の価格になっている。政府は、トルコリラ預金と外貨の交換を保証する奇策に出たが、これをサポートする財政体力の有無が問われている。
 インドネシアのCPIは、他国と比べると穏やかに推移しているが、11月は1・75%と少し伸びた。BIは来年のインフレ見通しを、物価目標のレンジ内(2〜4%)に回帰してくると予想している。一定レベルの通貨安は、生産拠点を多く抱えるインドネシアにとっては輸出競争力の面ではプラスといえるが、インフレは止めなければならない。まずは利上げ前に、現行の金融緩和政策の終了、具体的には銀行預金準備率の引き上げ等を通じた流動性供給の縮小、が最初のアクションになろう。「政策変更の示唆は前もって行う」とペリー総裁が述べているように、BIは市場との対話を重視する方針である。むしろ、インフレ高進に慣れていない市場や我々の方が、落ち着いた対応を継続出来るのか。2022年初の不確実性は、コロナ収束が見えなかった21年初とは質の違う形で、迫りつつある。(三菱UFJ銀行執行役員ジャカルタ支店長)        

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