文化と歴史探訪の週末 ブタウィ族 文化村 南ジャカルタ
オランダによる植民地統治が始まる17世紀ごろ、清王朝との朝貢貿易などで栄えたブタウィ族。ジャカルタの先住民であり、バタビアと改名されたのは「ブタウィの土地」という意味からと聞く。そこで今週の「おすすめ観光情報」は、南ジャカルタ・ジャガカルサにあるブタウィ族の文化村、「シトゥ・ババカン」を取り上げてみたい。ババカン湖を囲む文化村で陽気に暮らす彼らと接しながら、悠久の歴史に思いを馳せ、週末の一時を過ごすのもいい。
現在の北ジャカルタにあるスンダ・クラパから、内陸に向かって発展したバタビア。交易を通じて世界の文化を取り入れながら、多様な出自を持つブタウィ族はこの街の主人公であり続けた。
しかし、都市化の中で全国各地から人々が流入してくると、ブタウィ族は徐々に土地利権も失い、現在の人口は700万人を割り込んでいる。
混血も進むが、そこは「多様性の中の統一」を国是とするインドネシアだ。ジャカルタ特別州政府は2004年、ブタウィ族の独自文化を保護・継承する文化村「シトゥ・ババカン」をババカン湖沿いに開設。2017年には博物館も完成して、週末ともなれば一帯は家族連れなどで賑わう。
お隣のインドネシア大学から自転車でやってきた英国籍のペネロッピーさん(22)は、「新型コロナウイルスの影響で、今はオンライン授業のみ。運動不足の解消も兼ね、週末は読書をしながらこの湖で過ごすことが多い」という。
新設された博物館には、ブタウィ族の日常生活に欠かせない用具や民族衣装などが展示されている。ブタウィ族出身で博物館スタッフのアバン・ヨガさん(25)によると、結婚式で新郎新婦が身にまとう衣装は、「デザインや色使いは、中国やアラブの影響を受けている」という。
博物館の敷地内には、民族に伝わる伝統的なデザインを施した家屋など展示され、華やかなブタウィ族の民族舞踊なども見学できる。残念ながら、コロナ問題の影響を受けて公式イベントは中止になっているが、地元っ子がせめて練習は続けたいと集まることもあり、運がよければ軽やかな舞に出会えるかもしれない。(長谷川周人、写真も)