澄んだ空気 そよぐ涼風 車移動で避暑地を満喫 プンチャック峠
ジャカルタ近郊の避暑地といえばプンチャック峠。日本人学校の校外授業でも定番だった場所でもあり、およそ40年ぶりに訪ねてみた。車移動を前提とすれば、新型コロナウイルスの感染リスクも少ない。涼風に吹かれながらランチを楽しむなど、コロナ禍でも日帰りで行ける息抜きになりそうだ。
雨期に片足を突っ込んだような天候が続くが、日差しがなくても雨で湿度が上がり、個人的にこの時期は蒸し暑く感じる。そこで思い立ったプンチャック峠へのドライブ。距離にして80キロあまり。車で2時間ほどだから、その日の気分でふらっと出かけられる気軽さが嬉しい。
筆者がジャカルタに居住していた1970年代、近年のような渋滞はまったくなかった。ただ、道路状況がまだ十分ではなく、移動には時間がかかったが、今となってはボゴールまで一気に高速道路で抜け、あとは峠道をゆるゆる走る。一般道に降りても道幅はあるから、ドライブとしては快適だ。
もっとも、土産物店の車が路上を〝占領〟して、どうも意図的に渋滞を作り出しているフシがある。通り過ぎれば、渋滞原因らしきものはなく、特に週末は土産物売りに少々お付き合いする必要があるから、移動には余裕をもちたい。
峠にはいくつものハイキングコースもあるそうだが、今回のテーマは「気軽に楽しむ」。目的地は老舗ホテルのプンチャック・パス・リゾートに絞った。かつてジャカルタ日本人学校の校外学習で訪れ、クラスメートとやった肝試しやキャンプファイヤーを囲んでのフォークダンス…。甘酸っぱい思い出の地でもある。
ホテルの設立は1928年。オランダの植民地統治下にあったインドネシアで、独立達成の決意を内外に示した「青年の誓い」が、インドネシア青年会議で採択されたその年だ。
美しく整備された敷地内を歩けば、そこはスイスのツェルマットあたりの村に彷徨い込んだかのよう。高山植物に囲まれた白亜のヒュッテも、昔と変わらぬ古き良き佇まいを残していた。暖炉はもう使っていないそうだが、ジャカルタとは異質のこの空間に立っていると、燃え上がる薪の炎が脳裏に蘇るようだ。
ちなみに、訪れたこの日の最高気温は21度。ジャカルタとの寒暖差は10度以上になるから、文字通り、寒い。ローカルの人のように冬用ジャケットとまでは言わないが、セーターなどの用意は必要かも知れない。
さて、お楽しみの食事だが、インドネシア料理もあるが洋食メニューが豊富で、アルコール類もある。そしてなんといっても、従業員教育が行き届いており、気持ちよく食事ができる。ジャカルタの外資系ホテルともひと味違う、上質な時間を過ごせるだろう。
澄んだ空気。そよぐ涼風。大自然に身を委ねる週末の一時も悪くないと思った。(長谷川周人、写真も)