横断!スンダ海峡 日本の船でジャワ脱出 移動こそ旅の醍醐味
ジャワ島西端の港町ムラックから、日本の中古フェリーでスンダ海峡を横断する。今回のおすすめ観光情報は、それだけ。フェリーの甲板からジャワ島に昇る朝日を背に、辿り着いたのはスマトラ島の高台。そこから海峡をぼんやり眺めるだけで、不思議と充足感がみなぎってくる。
スンダ海峡は、ジャワ島とスマトラ島の間にあり、ジャワ海とインド洋を結ぶ。その幅は最も狭い海域で約24キロ。ジャワ島側のムラックとスマトラ島のバカウヘニはフェリーポートが整備されており、物資満載のトラックがひっきりなしに往来する、物流の大動脈だ。
ジャカルタからムラックまでは、渋滞がなければ車で3時間ほど。記者は中央ジャカルタ・タナアバン駅からフェリーポートに接続されたムラック駅まで夜行列車を利用したが、現在は廃線となっている。
スンダ海峡の物流を支えるフェリーには、日本の中古船が多く活躍している。記者が乗った「おおさど丸」の船内には、日本語のポスターや表示がそのまま残っていた。
おおさど丸は1988年から佐渡~新潟で運航され、スンダ海峡にやってきたのは2014年。記者は88年生まれで、インドネシアにきたのは13年。思わぬ〝同期〟との再会に、勇気をもらった。
ムラック~バカウヘニ間の航路は、30分程度の間隔で一日中運行されている。おすすめは朝5時ごろにムラックを出発するフェリーだ。天候にさえ恵まれれば、水平線から昇る朝日に照らされ、ジャワ島がその幻想的なフォルムを浮かび上がらせる。
フェリーは3時間ほどでスマトラ島のバカウヘニ港に到着。とりあえずオジェック(2輪タクシー)で、目についた高台に登ると、そこは海峡を一望できる絶景スポット。
列車と船を乗り継ぐだけの小旅行だが、喧騒と混沌のジャカルタを脱出し、海を渡ってみると、「ここではないどこかへ」という、純粋な放浪癖が満たされたような気がした。渡ったばかりのスンダ海峡と、その先に見えるジャワ島を眺めていると、充足感が体を巡った。(高地伸幸、写真も)