最高峰、貸し切り専用列車 クレタ・イスティメワ 駅も運行もオーダーメード
生まれてからお抱え運転手や専属料理人がいる生活が当たり前の超富裕層がいるインドネシア。そうしたクラスの方々をもターゲットにした最高峰のプライベートトレイン「クレタ・イスティメワ(KERETA ISTIMEWA)」が昨年9月28日、インドネシア国鉄開業74周年を祝う式典でお披露目されました。自力走行可能な気動車を持つ2両編成で定員は40人、貸し切り専用の豪華絢爛(けんらん)車両です。誰もが憧れる「プライベート」。国民的アイドルならともかく、一般人にとって飛行機の「プライベートジェット」はさすがに敷居が高すぎますが、列車の貸し切りなら私たちにも手が届きます。2020年最初のおすすめ観光情報は国鉄の最新鋭貸し切り専用列車、クレタ・イスティメワを紹介します。
これまでもインドネシアの鉄道の魅力を数々紹介してきましたが、公共交通機関利用禁止の日系企業もある当国では、まだ乗車経験がないという方も多いようです。乗ってみたいけどちょっと怖い、車や飛行機の方が早いし……と、単純に移動目的での利用に必要性を感じないという方も。しかしそれではもったいない、インドネシアの鉄道は想像以上に早く進化しているのです。
インドネシアの「豪華列車」といえば大統領専用列車として活躍していた従来の「クレタ・アピ・パリウィサタ(KERETA API PARIWISATA・観光列車)」がおなじみみです。定員20人ほどの気品あるクラッシックな客車はさすがの風格で、レギュラースケジュールの列車に連結し運行されるものです。
一方、最新のクレタ・イスティメワは自力走行可能な気動車が付いているので、始発終着駅も運行ダイヤもリクエストができ、思いのままに自分の列車を走らせることができるのです。同じ区間なら、40人で割れば、1人当たりの料金は一般列車のエクセクティフの数倍ほど。食事代込みです。これぞ真のプライベートトレインの醍醐味(だいごみ)。
内装は高級感あふれるモダンシックを基調とし、インドネシア風のテイストがプラス。さながら走るスイートルームのように、旅客機のビジネスクラス並みのラグジュエリーシート、リビングルームタイプのソファー、ダイニングテーブルとチェアーなど座席のバリエーションも工夫されています。ミニ冷蔵庫も完備したカウンターでは乗車時間によって様々な飲み物、フルーツ、食事などが用意され、もちろんトイレもお祈り用のスペースまであります。運転手の他、客室アテンダントやセキュリティーも同乗するので、走行中の安全管理と至れり尽くせりのサービスもおまかせです。
そして何よりも鉄道ファンをくぎ付けにするのが前後方の運転席の展望。びゅんびゅんと迫るレールとパノラマは圧巻です。飛行機ならたとえプライベートジェットでも、操縦席の見学や、飛行中にそこから景色を眺めることは恐らくできないと思うのですが、鉄道ならノンストップで見られる興奮、たまりません。
優雅に移動しながら食事や談笑を楽しむ完全プライベートの特別列車。もう、インドネシアの鉄道が怖いだとか危険だとかは言わせません(笑)。単なる移動輸送手段の枠を超え、ビジネスミーティング、ファミリーギャザリング、特別なアニバーサリーのイベントに、ホテルのボールルームやレストランの代わりに利用できる豪華プライベートトレインは皆様の大切な日をより一層思い出深いものにするでしょう。20年、一押しのおすすめです。ぜひご利用ください。
(水柿その子、日本旅行インドネシア、写真も)