迫力とコミカルな面白さ 人気の理由を実感 ウルワトゥ寺院のケチャダンス
インドネシアの一番人気の観光地はもちろんバリ島、その中で一番人気のツアーと言えば、ウルワトゥ寺院で見るケチャダンス。定番過ぎてパスしている方もいらっしゃるかもしれませんが、実際に見てみると、人気の理由を実感できます。
ウルワトゥ寺院はバリ島最南端のバドゥン半島南西部の断崖絶壁の上にそびえています。11世紀にジャワの僧ウンプ・クトゥランにより建立され、16世紀に高僧ダン・ヒャン・ニラルタが増築を行いました。海の精霊であるプタラ・ダラム・ベジがまつられている、重要なバリ・ヒンドゥー寺院です。
ケチャダンスの歴史の方は、実はあまり古くなく、1920年代後半にバリ芸術が開花する中で産まれたものです。その後、バリ島内で浸透していき、1950年代ごろには観光客向けに上演される舞踏劇として、現在の様式が確立しました。
■入れない寺院
ウルワトゥ寺院へ到着したら、まずはサロンをもらって腰に巻きましょう。準備が整ったら、早速、寺院へ向かいます。
最初に私たちを出迎えてくれるのは野生のサルです。まるで写真を撮られるのを待っているかのようです。そのまま道を進んで行くと、50段ほどの階段が現れます。
やっとの思いで登り切った所に現れるのが、ウルワトゥ寺院です。しかし、なぜか門が締まっており、近くで見ることはできません。実は、ウルワトゥ寺院の内部はヒンドゥー教徒しか立ち入ることが許されない聖域なのです。このため、観光客が見ることができるのは、遠くに見える門のみです。
しかし、門をよく見てみると、ガネシャ像が飾られていますし、太陽との美しいコントラストにより、立派な写真スポットとなっています。
■席はすぐ確保
時刻は午後5時。太陽も沈みそうなころ、ケチャダンスのチケットが販売されます。チケットを取ったらすぐに会場へ向かいましょう。
私が向かったのは約15分後でしたが、たった15分で、舞台がよく見える前の方の席はほぼ埋まっていました。
会場には約500人が座り、ほかにも、立ち見で300人ほどが鑑賞していました。ガイドの話によると、ほぼ毎日、満席になるのだとか。良い席で見たい人は、早めに席を確保することをお勧めします。
■「ケチャ、ケチャ……」
午後6時ごろ、待ちに待ったケチャダンスの始まりです。広大な海に浮かぶダイナミックな夕日をバックに、妙な静けさの中、上半身裸の男性約100人が、声を上げながら続々と会場に入ってきます。
舞台の中心を囲むように座った時、「ケチャ、ケチャ……」とケチャダンスが始まりました。基本的な四拍子を刻みリズムを取る者、合いの手を入れて全体をまとめる者など、それぞれのパートに分かれ、一つの音楽を作り上げていきます。
楽器をいっさい使わず、男性の声だけで奏でるそのリズミカルな音楽は、迫力があり、コミカルな面白さもあるエンターテインメントです。
「ラーマーヤナ」の伝統舞踏劇も迫力があります。客との掛け合いの中で笑いも起き、「一番人気」の理由が理解できる、充実した内容になっています。(パンダバス、藤田龍一、写真も)