ジョコウィ大統領2期就任 「45年5大国入り」目指す 民主化後退批判の中

 4月のインドネシア大統領選で当選したのジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領(58)の2期目の就任式が20日、中央ジャカルタの国民協議会(MPR)議事堂で行われた。任期は5年で、憲法の3選禁止規定により、最後の任期となる。就任演説でジョコウィ氏は「2045年5大国入り」を訴えた。成長持続の手腕が試される。汚職捜査機関の権限を縮小するなどの一連の法改正に対し「民主化改革の後退だ」と批判する大規模な学生デモが国内各地で起きたばかりで、政治姿勢も問われている。

 大統領選と同時に行われた国会議員選挙でジョコウィ氏の出身母体の第1党、闘争民主党と、第2党のゴルカル党などから成る与党連合は議席の約6割を獲得し、政権基盤は、2014年の1期目就任当時よりも安定している。
 ジョコウィ氏らは、大統領選の対抗馬である野党プラボウォ氏側をも取り込む大連立工作を続けてきた。ジョコウィ氏は、第2期政権の閣僚を21日に発表する方針を明らかにした。

■人材開発を優先

 ジョコウィ氏は就任演説で「独立100周年の2045年に先進国となっている」との目標をぶち上げた。「1人当たりの年間所得が3億2千万ルピア(約245万円)」などの試算を挙げ、「世界の5経済大国入りしている」と強調。目標達成のため、文化としてのイノベーションが必要であるとし「ルーティンを打ち破ろう」と訴えた。
 生産年齢層が多い「人口ボーナス」を好機として活用すると述べた上で、2期目の5年間で▽人材開発を最優先する▽インフラ建設の続行▽全ての制度的な障害の除去▽官僚機構の簡素化▽天然資源依存経済から製造業競争力と現代的サービスへ転換――に取り組むと語った。
 第1期ジョコウィ政権はインフラ建設を進め、今年3月に日本が協力したジャカルタ大量高速鉄道(MRT)が開通した。8月には、首都を東カリマンタン州の2県に移転する計画を発表。21年に建設に着手、24年から政府や議会の機能移転を進めると表明している。
 ただ、経済成長は伸び悩みの兆候もある。国際通貨基金(IMF)は今月の発表で、インドネシアのことしの成長見通しを4月時点から0・2ポイント引き下げて5・0%とした。米中貿易戦争などの不透明性が背景にある。

■国民分断の克服

 この日はジョコウィ氏と同時に当選したマアルフ・アミン副大統領(76)も就任した。マアルフ氏が総裁を務めてきた国内最大のイスラム団体ナフダトゥール・ウラマ(NU)は、ジョコウィ氏とマアルフ氏の当選に貢献し、発言力を増している。
 イスラム穏健派のNUに対し、強硬・急進派は大統領選でプラボウォ陣営の選挙運動の中核となって影響力を発揮、プラボウォ氏らのコンビは44・5%の得票を得た。ジョコウィ第2期政権は、イスラム勢力の支持取り付けのほか、他宗教の国民との間に生じた分断の克服が重要となる。
 また、パプア地域などでは8月以降、パプア人差別に反発し、パプア独立住民投票を求めるデモが拡大。ジョコウィ政権は国軍・警察を大量投入、インターネットを封鎖するなどしてデモを封じ込めるとともに、住民の動きを国際社会にネットで発信していた弁護士を容疑者認定するなど、スハルト政権当時さながらの強権的な治安政策を実施。インドネシアの民主主義自体が疑問視されている。
 9月以降の大規模学生デモでも「パプアの政治犯の即時釈放」が要求されている。

■米中角逐

 外交では、1期目は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の主体性を土台にした国際協力構想「インド太平洋アウトルック」を主導した。一方で、東南アジア地域での中国のプレゼンスは拡大を続けており、ジャカルタ〜バンドン高速鉄道は中国側が受注した。日米と中国の角逐の中で、舵取りが注目される。
 就任式にはシンガポールのリー・シェンロン首相やマレーシアのマハティール首相、オーストラリアのモリソン首相、日本の中山展宏外務政務官らが出席した。
 中部ジャワ州ソロの大工の子に生まれたジョコウィ氏は、家具輸出で成功した実業家。05年にソロ市長に選出され、12年にジャカルタ特別州知事、14年に大統領に就任した。庶民的な風貌と語り口で知られる。(米元文秋)

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